ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

ページ
100/140

このページは 第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部 の電子ブックに掲載されている100ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

BS-15分散液中の微粒子分散状態の可視化を目的とした新規MRI技術の構築○伊藤輝志1、池田純子2、林祥弘1、大貫義則1( 1富山大院薬、2日本ルフト株式会社)[背景・目的]粒子が分散した懸濁液は化粧品や塗料など様々な用途で用いられている。しかし、一般的に懸濁液は熱力学的に不安定であるため、懸濁液中では粒子の凝集や沈降といった問題が懸念される。製品中では粒子の均一な分散の保持が必要であるため、粒子の分散安定性を評価することが非常に重要である。従来、安定性はゼータ電位や粒子径の測定から評価されてきた。しかし、いずれの手法も濃厚な懸濁液について測定する場合、試料を希釈する破壊的な方法で行われ、その際に分散状態が変化し、測定結果に影響する可能性があることが問題点となる。そのため、懸濁液中の粒子の分散状態を非破壊的かつ直接評価できる新規手法の構築が求められる。そこで、本研究で着目した技術が核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging; MRI)である。MRIは医療分野などで広く利用される分子イメージング技術であり、T 2緩和時間(T 2)などのMRパラメータで画像化を行うと試料成分の分子運動性を可視化することもできる。我々はこれまでにMRIの分子運動性可視化技術を応用して、エマルション製剤のクリーミング挙動などの観察を行ってきた。本研究では、エマルションと同様に熱力学的に不安定な分散系である懸濁液を試料とし、MRIを用いて微粒子の分散状態を高感度かつ非破壊的に可視化する技術の構築を試みた。[方法]試料として日焼け止めクリームに使用される市販酸化チタン懸濁液(CM3K40T4J, KOBOディスパテック社製)を用いた。あわせて、市販懸濁液に配合される酸化チタン微粒子を既知濃度で有機溶媒(エタノールまたはシクロペンタシロキサン)に分散させた懸濁液を調製し、試料とした。これら試料懸濁液のT 2測定およびT 2マップの撮像を、パルスNMR (Acorn area, Xigo nanotools)およびMRI (9.4T, Agilent Technologies)を用いて行った。[結果・考察]有機溶媒懸濁液のT 2をパルスNMRおよびMRIで評価した結果、微粒子濃度の上昇に伴いT 2が低下することが明らかになった。また、測定されたT 2から酸化チタン微粒子と有機溶媒との濡れ性を評価した結果、シクロペンタシロキサンに比べ、エタノールの方が濡れ性は良好であった。続いて、有機溶媒懸濁液を室温で静置し、経時的な微粒子の沈降挙動をMRIで観察したところ、目視では不明瞭であった軽微な沈降現象をT 2マップで明確に観察することができた。なお、有機溶媒の違いを比較したところ、先の検討で微粒子との濡れ性が高かったエタノールを用いた方が、シクロペンタヘキサンの場合に比べて、分散安定性は良好である様子が観察された。最後に分散剤などを配合したより複雑な系である市販懸濁液の微粒子分散状態を評価した。なお、市販懸濁液は非常に安定であるため、遠心分離処理を行いながら試料のT 2マップを観察した。実験の結果、市販懸濁液においても、遠心分離処理時間の延長に伴って微粒子が沈降していく様子を観察することができた。以上の結果から、分散液中の微粒子の分散状態を可視化するための技術としてMRIが有用であることが示された。