ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

BS-17タバコ成分による大腸菌の情報経路変動と環境適応〇木戸浦悠斗、中西義信、白土明子(金沢大院医薬保)【背景・目的】タバコ成分によって細菌感染症が重篤化する場合があることが知られており、これまでは、タバコ成分が宿主組織を傷害することが原因であると理解されていた。一方で、細菌は環境変化を感知して生理状態を変化させる仕組みを持つことから、タバコ成分が細菌毒性を変化させて感染症に影響を与える可能性がある。細菌の環境感知を担う情報伝達系は二成分制御系とよばれ、センサーとして働くヒスチジンキナーゼと転写調節因子の二つのタンパク質の組み合わせで構成されている。細菌には二成分制御系が複数種類存在し、それぞれが特定遺伝子群の転写反応を正または負に制御し、固有の細胞応答に必要な遺伝子群の働きを一括制御することが知られている。そこで私たちは、タバコ成分が二成分制御系の活性を変化させて感染状態を調節すると予想した。本研究では、グラム陰性細菌のモデルである大腸菌を用いて、タバコ成分による二成分制御系の変動を網羅的に解析した。【方法】大腸菌の二成分制御系は約50種類の構成因子から成り、多くのグラム陰性細菌と共通している。各制御系で正に制御される遺伝子の転写プロモーター支配下にレポーターとした緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現させるように構築したプラスミドpBR322を大腸菌BW25113株に導入した。タバコ(マルボロ:タール12 mg、ニコチン1.0 mg) 5本を1単位として主流煙と副流煙をISO法により捕集し、PBSまたはイソプロパノールで抽出した画分を調製した。定常期まで培養した大腸菌をタバコ煙抽出液と共培養後、時間経過に伴うGFP蛍光強度を測定し、タバコ成分の影響を調べた。【結果・考察】液体培地での増殖に影響のない濃度でタバコ煙抽出液を添加して大腸菌を培養すると、3分から15分の間に転写プロモーター強度が変化する遺伝子が9種類見出された。これらの間で、主流煙抽出液と副流煙抽出液とで影響を受ける遺伝子の種類に違いはなかったが、その変化程度は異なっていた。活性変動の起きた二成分制御系には、ストレス応答や物質輸送に関わる細菌遺伝子群の発現を制御するものが含まれていた。以上より、タバコ成分は二成分制御系を介して大腸菌の性質を変化させることが分かった。タバコ成分による細菌感染症の重篤化は、タバコ成分が宿主ではなく細菌に作用することで起こる可能性がある。