ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

BG-3金属ポルフィリン錯体の合成・性質と光線力学的治療への応用(金沢大院医薬保)〇李思巧智,胡?君,黄檗達人,小川数馬,小谷明【背景・目的】光線力学的治療PDT (photodynamic therapy)は、光感受性物質PS(photosensitizer)と弱いレーザー光によって生じる光線力学的反応により、光を当てた癌部位だけを選択する治療法である。PDTの抗腫瘍メカニズムは、光感受性物質が赤色光により励起され、エネルギー移動により形成された一重項酸素による殺細胞効果と考えられている。現在、PDTは乳がんや皮膚がんを初めとして、食道がん、胃がん、肺がんなど臨床的に応用されており,光感受性物質は非金属ポルフィリン光増感剤が主に用いられているが、腫瘍組織に対して高い選択性及び集積性を具備するものが望まれている。本研究では金属ポルフィリン光増感剤MTPyP(metal-tetrapyridylporphyrin)とプラチナ製剤Pt(NH3)2(cisPt)、Pt-dach (oxaliPt)を組み合わせた新たな抗がん剤4Pt-MTPyPを合成し、性質評価と抗がん活性を検討した。【方法】4Pt-MTPyP錯体(M=Sn(IV))の合成は常法に従い、元素分析、NMRにより同定を行った。colon26とsarcoma180細胞株を用いて、MTTにより合成錯体のin vitro細胞増殖阻害評価を行った。オクタノール/水分配係数log Pを測定し、錯体の親水性を検討した。光照射による一重項酸素1O2量は9,10-Anthracenediyl-bis(methylene)dimalonic acid (ABDA)により測定した。光照射に対する錯体の安定性評価をUVから行った。TPyP錯体の会合の有無について0から10μMまでを検討した。細胞内およびBALB/cマウス取り込み実験を行い、ICP-AESにより4Pt-MTPyP錯体の金属量を測定した。colon26をマウス皮下移植した担がんマウスの腫瘍体積測定により、4oxaliPt-TPyP、4oxaliPt-SnTPyPのin vivo抗がん活性を評価した。【結果・考察】今回合成した4oxaliPt-SnTPyP、4cisPt-SnTPyP錯体は、Sn、またPt錯体の導入により親水性が大きく増加していた。4oxaliPt-MTPyPの一重項酸素生成効率はABDAの量子収率Φ0.76より多く、増感効果が示された。MTT実験によって細胞毒性を評価したところ、光毒性は暗毒性より活性が高く、PDT可能と推定された。In vivo抗がん活性実験について、4oxaliPt-TPyP 8.25 mole /kg投与マウスはがんをほぼ抑え、4oxaliPt-SnTPyP 5 mole /kg投与マウスより明らかに良いことがわかった。詳細な抗がん作用メカニズムについて現在検討中である。