ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

1-3エピルビシン塩酸塩の凍結乾燥製剤と液体製剤における血管障害発現頻度の比較○寺下朋江、高嶋孝次郎福井県済生会病院薬剤部【目的】エピルビシン塩酸塩は、乳癌治療において中心的役割を担い、術前・術後化学療法に繁用されるアンスラサイクリン系薬剤である。わが国においては、凍結乾燥製剤と液体製剤が市販されており、凍結乾燥製剤は生理食塩液で溶解した時のpHが4.5~6.0である。液体製剤は混合調製時の効率化と被曝軽減を目的として開発された製剤であるが、薬剤の安定性を保つためpHは2.5~3.5と低い値になっており、血管痛、静脈炎などの血管障害が高頻度に起こることが報告されている。当院では、2015年4月に凍結乾燥製剤の先発品から液体製剤の後発医薬品に切り替え、さらに2017年1月に凍結乾燥製剤の後発医薬品に切り替えたため、切り替え前後での血管障害の発現頻度についてレトロスペクティブに調査した。【方法】2013年4月~2017年7月に当院の乳腺外科にてエピルビシン塩酸塩を含むFEC療法(エピルビシン・シクロホスファミド・フルオロウラシル)及びEC療法(エピルビシン・シクロホスファミド)を開始した患者145名を抽出した。そのうち、凍結乾燥製剤と液体製剤の両方を投与された7名、期間中に4クール以上投与できなかった10名、患者希望で初回からCVポートを挿入した4名を除外した計124名を対象とした。エピルビシン塩酸塩の血管障害については、電子カルテの記事を参照し、穿刺部周囲の血管痛、硬結、索状化、静脈炎に関する記載があったものを抽出した。また、CVポート留置の有無についても調査した。凍結乾燥製剤と液体製剤における血管障害の発現頻度の差は、Fisher’s exact testにより検定した。【結果】エピルビシン塩酸塩による血管障害発現頻度は、液体製剤群で有意に高かった。CVポート留置の頻度については、有意差はみられなかったものの液体製剤群で高い傾向にあった。【考察】エピルビシン塩酸塩は、凍結乾燥製剤に比べ液体製剤で血管障害が多いことが報告されているが、pHは重篤な血管障害の原因ではないことも示唆されている。エピルビシン塩酸塩は、薬剤そのものが血管内皮細胞障害を引き起こすことが報告されており、投与時間の短縮及び補液の追加により、末梢血管内にエピルビシンが高濃度に滞留する時間を減少させることが推奨されている。当院では、液体製剤に切り替えた際にエピルビシン塩酸塩の溶解液の量が50mLから100mLに増えたことも血管障害が増加した要因の一つと推測される。また、入院と外来の投与方法の違いも要因となっている可能性があり、今後検討が必要と思われた。患者の治療意欲やQOLの維持のためには、さらなる改善が必要と考える。