ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

1-5治療抵抗性統合失調症においてクロザピンが著効した1症例○岡井美可、大坂祐依、笠嶋悠、川﨑美雪、宇野美津江、森富男福井県立病院薬剤部【目的】クロザピン(CLZ)は治療抵抗性統合失調症に唯一適応のある薬剤である。しかし、好中球減少症や耐糖能異常といった重大な副作用も多いため、その開始には入院が義務づけられ、定期的な血液検査を行うよう定められている。今回、精神症状の悪化から保護室より退室できずにいた患者が、CLZ服用により症状改善し、無事に退院、施設通所ができるまでに至った過程で薬剤師が深く関与した1症例を報告する。【症例】54歳男性治療抵抗性統合失調症夜間不眠、大声での激しい独語、幻聴に左右されて家の天井を外して屋根裏に上がる等の行動が見られ入院となった。オランザピン20mg/日、リスペリドン6mg/日を4週間以上服用しても症状は改善せず、保護室から退室することができなかった。これまでにも抗精神病薬を多剤併用してきた患者でもあったため、CLZ導入を医師に提案した。血液検査の結果は問題なく、患者家族と面談し、CLZの副作用や入院・血液検査等の規定を説明し、同意を得てCLZ12.5mg/日が投与開始となった。導入に際し、薬剤師が主体となり病棟看護師を対象に薬剤説明を行った。また、血液検査結果や副作用記録用のモニタリング表を作成し、医療者間で情報共有できる体制を整えた。約2ヶ月かけて550mg/日まで増量し、独語は減少したが、気分高揚・多動といった症状が目立ってきたため医師と協議し、炭酸リチウム600mg/日を開始した。炭酸リチウムについては血中濃度の測定を医師に依頼し、測定結果と患者の症状をもとに医師と協議して投与量をその都度調節した。CLZ開始3ヶ月後にCLZ600mg/日まで増量すると症状は著明に穏やかとなり、保護室を退室した。その後、3ヶ月かけて炭酸リチウムを漸減中止した。CLZ開始9ヶ月後には内服薬の自己管理を開始し、11ヶ月後に退院となった。退院の際には患者家族に注意すべき副作用症状や対応の指導を行った。現在、ほぼ毎日施設に通所し、家事の手伝いを率先して行うなど良好状態が続いている。【結果および考察】CLZは治療抵抗性統合失調症患者にとって、著効する可能性がある最終選択薬であるが、副作用のリスクから、その導入や継続には医療者の積極的な介入が必要である。薬剤師として、CLZ導入の検討段階から介入し、副作用のモニタリング、併用薬の検討等を積極的に行うことで患者のより安全な服薬継続が可能になると考えられる。今後もCLZに症状改善の望みをかける患者・患者家族のために治療に貢献したいと思う。