ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

1-6血小板減少、サイトメガロウィルス(CMV)の再活性が認められた造影剤による重症薬疹の1例○旅佳恵1吉村雅美1水野昭宏1山下岳至1和田攻2牧野輝彦1高岡ふしき病院薬剤科2循環器内科3富山大学附属病院皮膚科3【背景】薬疹は原因薬剤や個人の体質などにより多彩な臨床症状を呈し、時には入院治療を必要とする重症例も経験する。非イオン性ヨード造影剤であるイオヘキソールは主に多形紅斑型や丘疹紅斑型の薬疹を生じることが知られている。今回、我々はイオヘキソール投与後に紅皮症を生じ、更に血小板減少、サイトメガロウィルス(CMV)の再活性化を認め、症状が遷延した重症薬疹を経験したので報告する。【症例】75歳女性。当院泌尿器科において造影CT検査の際にイオヘキソールが投与された。投与約12時間後に顔面浮腫と全身紅斑、38℃台発熱が出現した。直ちに近医受診し、抗ヒスタミン薬とグリチルリチン製剤を2日間投与されるも改善せず、当院に紹介入院となった。入院時、体温38.1℃、全身紅斑をみとめた。血液検査では白血球数5900/μlと基準値内であったが血小板は35000/μlと減少していた。異形リンパ球は検出されず、肝機能異常、腎機能異常は認めなかった。経過よりイオヘキソールによる重症薬疹と考え、プレドニゾロン(PSL)40mg/日の全身投与と抗ヒスタミン薬、ステロイド外用剤による治療を開始した。治療開始後、発熱は比較的速やかに軽快したが、紅斑と血小板減少が遷延した。血小板数に注意しつつPSLを5mg/週で漸減していき、約1ヶ月後に血小板数は正常化し、軽度の紅斑は残存していたが退院となった。血小板減少の原因検索のためHHV-6とCMVの抗体価を測定したところ、CMV IgM抗体価が上昇していた。CMV感染による重症化に注意しながら、PSL治療を継続し、発症2ヶ月後にPSL治療が終了した。その後、イオヘキソールによるパッチテストを施行したところ陽性であり、イオヘキソールが原因薬剤であることが確認された。【考察】ウィルス感染が関与する重症薬疹として薬剤過敏症症候群(DIHS)が知られている。本症例は異型リンパ球の出現や肝機能異常を認めなかったため、DIHSの診断には至らなかった。また、DIHSの原因薬剤にイオヘキソールは含まれていない。しかし、紅皮症と発熱、薬剤中止後も遷延した血小板減少は、CMVの再活性化の関与が疑われ、DIHSに近い病態であったと推測された。このような場合、PSLの急激な減量、中止により症状が再燃する可能性がありPSL漸減には注意が必要である。患者には治療内容の理解と薬の自己中断がないよう指導する必要がある。また薬剤師がこのような病態が存在することを認識し、適切な患者教育と医療従事者への情報提供を行っていくことが重要である。