ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

2-1大腸がん術後疼痛におけるアセトアミノフェン静注液定時投与の有効性○堀田栄冶1、髙橋裕治1、高嶋孝次郎1、斎藤健一郎2、髙嶋吉浩2、宗本義則1福井県済生会病院薬剤部、2福井県済生会病院外科2【目的】当院で施行された大腸がん手術では、従来から硬膜外麻酔を用いて鎮痛効果を得ていた。しかし、術後疼痛で鎮痛薬を要求する頻度は多く、硬膜外麻酔だけでは十分な鎮痛効果が得られていなかった。近年、作用機序の異なる複数の鎮痛薬を組み合わせる多様式鎮痛法(multimodal analgesia)が推奨されている。単剤による鎮痛薬で鎮痛効果を求めると、その鎮痛薬の投与量が多くなり、それに伴って副作用も強く現れやすくなるためである。そのため、当院でも大腸がん手術にアセトアミノフェン静注液を追加で定時投与することで術後の鎮痛薬使用頻度を減らすことができるかを検討した。【方法】福井県済生会病院において硬膜外麻酔を受けた大腸がん手術施行症例を対象とした。アセトアミノフェン静注液の定時投与を2017年2月中旬から行っている。2017年3月から2017年5月の症例をアセトアミノフェン注定時投与群とし、対照群として2016年3月から5月の症例をアセトアミノフェン非定時投与群とした。アセトアミノフェン注定時投与は手術当日から経口摂取が不十分である術後2日目までに6時間間隔で投与した。評価方法として手術当日から術後2日目の期間に疼痛を訴えて鎮痛薬を使用した回数とした。肝機能への影響としてASTとALTを評価した。術前と術後7日目の検査値をCommon terminology criteria for adverseevents(CTCAE)v4.0を用いてG1からG4で評価を行い、1段階以上のグレード上昇を肝機能に影響ありとした。当院の施設基準値の範囲内(AST<40U/L、ALT<45U/L)の時はG0とした。【結果】術後疼痛時の鎮痛薬使用頻度はアセトアミノフェン非投与群で平均2.6回であったが、アセトアミノフェン投与群で平均1.3回と有意に使用頻度を減少させた(p=0.008)。肝機能値への影響に関しては、ASTのグレード上昇例数は有意差を認めなかったが、ALTのグレード上昇例数は有意に増加した(p=0.043)。【考察】大腸がん手術施行時の鎮痛薬として硬膜外麻酔投与にアセトアミノフェン注定時投与を追加したことで患者の術後疼痛からの苦痛を軽減できたと考える。肝機能への影響としてALTの上昇を有意に認めているが、いずれも軽度であり、肝庇護薬を使用することなく改善しているため、主治医と相談の上、許容範囲内と判断した。ただ、2例のみASTの顕著な上昇を認めた。いずれも肝転移により術前からASTは高値であった。要因については断定できないが、術前より肝酵素が上昇している症例に対しては術後の増悪に注意が必要と考える。肝機能への影響については例数が少ないため、今後さらに症例数を増やして検討を行っていきたい。