ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

2-2リネゾリドの投与量調節による安全性と有効性の検討○久保田知世、堀田栄治、高嶋孝次郎福井県済生会病院薬剤部【目的】リネゾリド(以下、LZD)は、腎機能障害による投与量調節が不要とされている。しかし、長期投与症例や腎機能低下症例では血小板リスクが上昇するとの報告もあり、腎機能低下症例でのLZDの安全性は十分に検討されていない。LZDの用法用量は添付文書上、1回600mg1日2回となっているが、血小板が低下している症例において副作用リスクを考慮して1日1回600mgに減量投与されているが見受けられた。減量投与された症例で感染症が改善し、一方で通常量ではLZD治療を完遂できずに他剤に変更する場合が認められた。そこで、LZDを減量したことによる安全性とLZD完遂率について検討を行った。【方法】福井県済生会病院において、2009年4月~2014年3月までにLZDを経口投与された入院患者35例を対象とした。調査項目は年齢、性別、体重、LZD投与期間、腎機能、血小板減少の有無と変化、LZD完遂率について後方視的に調査した。ただし、輸血、GCSF製剤、LZD投与前に他の抗MRSA治療薬を投与された症例、抗癌剤などの免疫抑制薬を投与された症例、播種性血管内凝固症候群による血小板減少低下を疑われた症例は除外した。LZD投与開始により白血球及びCRP低下、解熱など臨床症状が改善し、LZD治療が終了後も再燃が認められない場合を「完遂」と定義した。また副作用により、LZD投与終了もしくは他剤変更となった場合を「未完遂」とした。統計解析にはWilcoxon rank sum testを用いた。p値は0.05未満で有意差ありとした。【結果】LZD投与前後の血小板の変化は腎機能に関係なく1日2回投与群で有意に減少が認められた(p<0.05)。LZD完遂率は1日1回投与群で70%、1日2回投与群で52%であった。LZD治療が未完遂となり、中止後再燃が認められた症例は1日1回投与群では0/3例(0%)であったが、1日2回投与群では4/12例(33%)であった。【考察】腎機能に関係なく、通常量で有意に血小板減少が認められた。またLZDを通常量投与することで副作用による中止を余儀なくされた症例は少なからず認めており、また中止後再燃した症例も見受けられた。減量投与により血小板減少は抑えられ、LZD治療の完遂率は通常量と比較してやや上昇していた。血小板減少率を抑えるため、また感染症治療を高めるためにLZD減量投与は治療選択肢の一つとして検討することが出来ると考える。しかし、減量投与については引き続き治療効果や耐性菌への影響も考慮し、慎重に検討していく必要がある。