ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

3-5リファンピシンによるリネゾリド血中濃度低下とそのメカニズムの検討―臨床および基礎的研究―〇橋本さつき1、本田恭子1、藤田浩平1、宮地佑佳1、菅幸生2、嶋田努崔吉道11金沢大学附属病院薬剤部、2金沢大学医薬保健研究域薬学系1、【目的】リネゾリド(LZD)はオキサゾリジノン系抗菌薬であり、抗MRSA薬の中で唯一経口・注射両剤形を有する。初期の臨床試験の結果、TDMは不要とされていたが、近年LZDの血中濃度と副作用との関連を明らかにした複数の報告がある。また血中濃度変動の原因となる薬物間相互作用に関する報告は少ないが、リファンピシン(RFP)がLZDの血中濃度を低下させるとの臨床報告がある。そこで本研究ではRFPのLZD血中濃度への影響を前向き非盲検試験にて検討した。またラットを用いて、RFP前処置が経口あるいは経静脈投与したLZDの体内動態パラメータに与える影響を検討し、さらにRFPが小腸でのLZD吸収過程を変化させるかについて検討した。【方法】金沢大学附属病院において2010年10月から2013年10月にLZDを経口投与された20歳以上の成人症例10例を対象とした。RFP併用の有無によりRFP併用群と非併用群の2群に分け、患者背景、LZD投与量、投与期間、初回TDM実施日、初回LZDトラフ濃度、TDM結果による用量調節の有無を比較検討した。動物実験はSD系雄性ラットにRFPを4日間前投与し、RFP最終投与の24時間後にLZDを静脈内または経口投与した後、血漿中LZD濃度はLC/MS法により、ラット小腸トランスポーター発現レベルはReal-time PCRにより、LZDの小腸膜透過性はUssing Chamber法によりそれぞれ測定・評価した。【結果および考察】日本人における初めての前向き臨床試験において、初回LZDトラフ血中濃度/投与量比(C/D比)はRFP併用により64.7%低下した。またRFP併用群ではTDMによる用量調節は不要であったが、非併用群では42.9%の症例で減量を要した。したがってRFP併用時はTDMが重要と考えられる。動物実験の結果、LZD経静脈投与時はLZDの体内動態パラメータにRFPは影響を与えなかったが、LZD経口投与時にはLZDのAUCが56%に有意に低下した。また、RFPは排出トランスポーターである小腸Mdr1aおよびMrp2 mRNAを誘導したことから、吸収過程での相互作用が考えられた。しかし、Ussing Chamber法を用いた小腸透過実験では、小腸の上・中・下部いずれの部位においてもRFPはLZDの膜透過に影響を及ぼさず、少なくともMDR1やMRP2の寄与は少ないと考えられた。RFPとLZDの相互作用に関するメカニズムは、今後さらなる検討が必要である。