ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

分子標的治療薬を用いたがんの個別化治療について衣斐寛倫(金沢大学がん進展制御研究所腫瘍内科・金沢大学新学術創成研究機構)がん細胞には多数の遺伝子異常が生じているが、一部のがんにおいては特定の遺伝子異常が腫瘍の発生、生存に強く関与している。このような遺伝子異常はドライバー遺伝子異常と呼ばれ、異常タンパクの抑制薬(多くはキナーゼ阻害薬)が臨床応用されている。一方、我々のグループは、現在有効な治療薬の無いKRAS変異がんに対する新規治療開発を行っている。KRAS変異がんにおいては、変異KRASの直接阻害が困難であることから下流のMEKキナーゼの阻害薬が検討されてきたが、その効果は臨床試験では限定的であった。KRAS変異肺がん細胞株を用いたシグナル解析により、MEK阻害薬投与はフィードバック機構を介した受容体キナーゼの活性化を惹起することを明らかにした。また、活性化される受容体は腫瘍の上皮間葉移行状態により異なっており、同じKRAS変異を有する腫瘍であっても、細胞の性質により個別化した治療が必要であることが示唆されている。本講演では、臨床現場におけるドライバー遺伝子の評価法および治療導入の状況について概説するとともに、我々の研究も含めたがんの個別化治療の方向性について考察を試みたい。