ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

天然物基本骨格から新規細胞周期阻害剤の創成後藤(中川)享子(金沢大・薬)化学構造・生理活性ともに多様性に富む天然物が、医薬品のルーツであることは周知の事実である。天然物からの医薬品シードの探索は、手間とコストがかかるため多くの製薬企業が手を引いていく現状においても、今なお承認される新薬の半数は天然物を起源とする。さらに、コンビナトリアルケミストリー・ハイスループットスクリーニング等を含めた目覚ましい科学技術の進化、研究開発への膨大な投資にも関わらず、年間に承認される新薬の数は1950年代と殆ど変わらない。近年では細胞表面受容体あるいは細胞外リガンドを標的とした生物製剤に力を入れる傾向にあるが、小分子製剤は細胞内標的に対してより効果的に作用するため、創薬パイプラインには欠かせない存在である。小分子製剤の標的となるものは、ヒトゲノムにエンコードされるタンパク質の僅か1%程度である(2006年の報告では207種)。その多くを大まかに分類すると、GPCR、核酸、電位依存性チャンネル、リガンド開口型チャンネルの4種にすぎない。この様に標的となるタンパク質に制限がかかる理由の一つが、”Chemical diversity”の欠如である。個々のタンパク質の3次元構造の多様性に対し、我々が手にしている化学構造の多様性は遥かに小さい。それでも合成品と比較すると、天然物の化学構造は多様性に富み、ケミカルスペースの占める割合も格段に広い。この多様性を生み出すのは、生合成に関与する生物特有の酵素による。しかし残念ながら、基質依存的であるがゆえ酵素反応にも限界がある。従って、人工的な化学反応を補うことで充足されていないケミカルスペースを埋めることができ、それが新しい標的タンパクへの発見や新薬創成に繋がると我々は考えている。天然物誘導体だけでなく、その基本構造から閃いた化合物、即ち”Natural product-inspired compound”による新規抗がん剤シードの開発を目指している。フラボノイドは、我々が食する野菜・果物等、植物全般に含まれる天然物である。基本構造として2つのフェニル基が3つの炭素で繋がったC6C3C6を有する。一般的には毒性はなく、ヒトに対してはどちらかと言うとポジティブに作用するものが多い。この様なフラボノイド基本骨格を基盤に、新規細胞周期阻害剤を創生し、置換基側鎖のコンビネーションによる生理活性の違いを検証したので、その詳細を紹介する。