ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-2mTORC1によるSox9を介した骨格形成制御○堀江哲寛、家崎高志、深澤和也、金田勝幸、檜井栄一(金沢大学大学院・医薬保健学総合研究科・薬理学研究室)【背景・目的】Mechanistic target of rapamycin(mTOR)は、増殖、成長、代謝や翻訳などのさまざまな細胞機能を制御するセリン/スレオニンキナーゼであり、哺乳類ではRaptorを含むmTOR complex 1(mTORC1)とRictorを含むmTOR complex 2(mTORC2)の2種類の独立したシグナル複合体を形成する。mTORシグナルと骨格形成の関連性については、阻害剤を用いたin vitro解析が行われてきたが、使用する細胞の種類、あるいは使用する阻害剤の暴露時間や濃度等の実験条件の差異のため、一定の結果は得られていない。さらに、骨格形成におけるin vivoでのmTORC1シグナルの重要性は、mTORC1関連遺伝子の全身遺伝子欠損マウスが胎生致死のため、ほとんど明らかとなっていないのが現状である。そこで本研究では、組織特異的な遺伝子改変マウスを用いてmTORが骨格形成にどのように寄与するかについて検討した。【方法】間葉系細胞特異的遺伝子欠損マウス作成を目的として、Prx1遺伝子プロモーターの下流にCrerecombinase遺伝子を挿入したPrx1-Creマウスを使用した。Prx1-Creマウスと、Mtor floxマウス、Raptor floxマウス及びRictor floxマウスを用いてPrx1-Cre;Mtor fl/flマウス、Prx1-Cre;Raptor fl/flマウス及びPrx1-Cre;Rictor fl/flマウスを作製した。胎生18.5日齢のマウス胎児を用いて、アルシアンブルーとアリザリンレッドの二重染色により骨格標本を作成した。さらに、各遺伝子欠損マウスの四肢から間葉系細胞を単離し、micromass culture法により軟骨細胞への分化誘導を行った。また、細胞での遺伝子発現およびタンパク質発現をqPCR法およびimmunoblot法により解析した。【結果・考察】Prx1-Cre;Mtor fl/flマウス及びPrx1-Cre;Raptor fl/flマウスは胸郭の形成異常により、出生後間もなく死亡した。また、胎生18.5日目での解析では、四肢の著明な短縮および頭蓋骨の形成異常が観察された。一方、Prx1-Cre;Rictor fl/flマウスでは骨格の形成異常は認められなかった。Rictor欠損細胞では、野生型細胞と同程度に間葉系細胞から軟骨細胞への分化が誘導されたが、Mtor欠損細胞およびRaptor欠損細胞では、軟骨細胞への分化が著明に抑制されていた。さらにRaptor欠損細胞での発現解析を行った結果、軟骨細胞の分化に必須の転写制御因子Sox9のタンパク質発現が著明に低下していたが、mRNA発現は野生型細胞と比較して有意な変動は認められなかった。以上のことから、mTORC1はSox9のタンパク質発現制御を介して、骨格形成に重要な役割を果たしている可能性が示された。