ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-3ラット単離大腸粘膜のCl -輸送に対するジヒドロピラゾール誘導体の阻害効果○村田望1、杉本健士2、三浦優佳2、清水貴浩1、藤井拓人1、松谷裕二2、酒井秀紀1( 1富山大院・薬・薬物生理学、2富山大院・薬・薬品製造学)【背景・目的】致死性遺伝子疾患・嚢胞性線維症の原因遺伝子であるcystic fibrosis transmembraneconductance regulator (CFTR)は、呼吸器および消化管上皮の管腔側膜に発現し、cAMP依存性Cl -チャネルとして機能している。大腸粘膜のクリプト細胞におけるCl -分泌はCFTRを介して行われており、プロスタグランジンE 2 (PGE 2)は、cAMP経路を介してCFTRを開口し、アセチルコリンは、Ca 2+経路を介してCFTRの機能を促進する。コレラ毒素による激烈な分泌性下痢には、細胞内cAMP濃度の持続的上昇によるCFTRの異常な活性化が関与している。これまでに、ピラゾール誘導体およびジヒドロピラゾール誘導体はカチオンチャネルの活性を抑制することが報告されているが、CFTRなどのアニオンチャネルに対する効果の報告例はない。本研究では、14種のジヒドロピラゾール誘導体(KYY-001~KYY-014)を新たに合成し、これら化合物の大腸粘膜イオン輸送に対する効果を検討した。【方法】安楽死させたラットから遠位結腸を摘出し、筋層を除去後シート状にし、Ussing Chamberにセットした。単離粘膜を介するイオン輸送は、短絡電流I scとして測定した。大腸粘膜の管腔側または漿膜側を1価イオン透過性にする際は、イオノフォアであるnystatin (200 ?g/ml)で処理した。イオンチャネル電流は、パッチクランプホールセル記録法により測定した。Na + ,K + -ATPase活性はATP加水分解時に生じる無機リン酸量を、ウアバイン(100 ?M)の存在下、非存在下で定量することにより算出した。【結果・考察】まず、PGE 2 (0.5 ?M)または膜透過性cAMPアナログdibutyryl cAMP (DB-cAMP、1 mM)により誘発されるI scの上昇に対する14種のジヒドロピラゾール誘導体(KYY-001~KYY-014、10 ?M)の効果を検討したところ、KYY-005のみが顕著な抑制効果を示し、その他の誘導体の効果は小さかった。KYY-005のDB-cAMP誘発性I sc上昇に対する抑制効果は、濃度依存的であり、そのIC 50値は3.2 ?Mであった。他方、アセチルコリンの安定アナログcarbachol (50 ?M)が誘発するI sc上昇において、cAMP経路と相互作用する成分もKYY-005 (10 ?M)により抑制された。KYY-005とその他の誘導体の効果の差異について、2,3-ジヒドロピラゾール環の3位に結合した置換基に着目し、構造活性相関の検討を行ったところ、KYY-005のパラトリフルオロメチルフェニル基の持つ強い電子求引性が、顕著な阻害効果の発現に重要である可能性が示唆された。漿膜側をnystatin処理により1価イオン透過性にし、漿膜側>管腔側のCl -勾配をつけた状態でのDB-cAMPによるI sc上昇は、CFTR阻害剤CFTRinh-172 (10 ?M)によって抑制され、この成分はKYY-005 (30 ?M)によっても同様に抑制された。一方、管腔側をnystatin処理し、漿膜側<管腔側のK +勾配をつけた状態でのDB-cAMPによるI sc上昇は、KYY-005により抑制されなかった。またKYY-005 (10 ?M)は、Na + ,K + -ATPaseおよび電位依存性Ca 2+チャネルを有意に抑制しなかった。以上の結果から、KYY-005は、ラット大腸粘膜において、CFTR阻害剤として機能することが示唆された。ジヒドロピラゾール誘導体がアニオンチャネルを抑制するという報告例は今回が初めてである。