ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-4腸管マクロファージのIL-10産生亢進を標的とした炎症性腸疾患の新規治療薬として有用な生薬由来化合物の探索○若林ののか、林周作、門脇真(富山大・和漢研)【背景・目的】炎症性腸疾患(IBD)は、原因不明の慢性炎症疾患である。厚生労働省の指定難病であり、患者数も年々増加している。IBDの治療には、ステロイドや抗TNF-α抗体等が使用され早期寛解導入が図られているが、十分な病態改善が得られないことも多い。また、再燃防止のための長期寛解維持に有用な薬剤はなく、IBDの発症・病態形成機構の解明ならびに新規で有用な治療薬の創出が求められている。最近私たちは、腸管粘膜に存在する腸管マクロファージにおいて抗炎症性サイトカインIL-10の産生を亢進させることが、IBDに対する新規治療法として有用となる可能性を示した。そこで、本研究では、IBDに対する新規治療薬の探索を目指し、創薬リソースとして生薬由来化合物を用い、腸管マクロファージのIL-10産生を亢進させる薬物のスクリーニングを行った。【方法・結果】BALB/cマウスから採取した骨髄細胞をMacrophage colony stimulating factor (100 ng/mL)存在下で7日間培養し、骨髄細胞由来マクロファージ(BMDMs)に分化させた。BMDMsを生薬由来化合物(10μM)で1時間前処理し、LPS (100 ng/mL)で24時間刺激後、培養上清中のIL-10タンパク濃度を測定した。96種類の生薬由来化合物のうち、Berberine chlorideがBMDMsのIL-10産生を有意に亢進させることを見出した。次に、マウスの腸管粘膜固有層から単離した免疫細胞のIL-10産生に対する候補化合物の効果を検討した。Berberine chloride (30μM)は、腸管粘膜の免疫細胞におけるIL-10 mRNA発現を有意に亢進させたが、炎症性サイトカインmRNA発現を抑制する傾向を示した。3%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)をBALB/cマウスに7日間自由飲水させ、DSS誘起大腸炎モデルを作製し、DSS誘起大腸炎モデルの発症に対するBerberine chlorideの効果を検討した。Berberine chloride (100 mg/kg)はDSS飲水期間中1日1回経口投与を行った。溶媒投与群では、DSSの飲水により、体重の減少、下痢や下血などの大腸炎症状および結腸丈の短縮が観察されたが、Berberine chloride投与群ではこれらの症状が有意に抑制されていた。また、Berberine chloride投与群の大腸では、溶媒投与群に比べてIL-10 mRNA発現が有意に上昇しており、炎症性サイトカインmRNA発現が有意に低下していた。【考察】本研究から見出されたBerberine chlorideは、腸管マクロファージのIL-10産生亢進を標的としたIBDに対する新規治療戦略におけるリード化合物となる可能性が期待される。