ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-5miR-222-3pによるヒト加水分解酵素AADACの発現制御○徳満槙作、深見達基、中島美紀(金沢大薬)[目的]薬物代謝の第I相反応の1つである加水分解反応は、エステル、アミドおよびチオエステル等の構造を有する薬物の代謝的活性化や解毒に重要な役割を果たす。アリルアセタミドデアセチラーゼ(AADAC)は、ヒト肝臓や小腸に発現する加水分解酵素であり、カルボキシルエステラーゼ(CES:CES1およびCES2)と並んで様々な薬物の加水分解反応を触媒する。当研究室では、主要な薬物代謝酵素であるシトクロムP450がmicroRNA (miRNA)による発現調節を受けることを明らかにしてきた。miRNAは疾患やストレス、生体外異物への暴露などによって容易に発現変動することから、miRNAによる転写後調節は薬物動態の個人内および個人間変動を引き起こす要因となる。本研究では、miRNAがAADACの発現制御に関与する可能性を明らかにし、加水分解反応の個人差解明の一助となる新たな機構を見出すことを目的とした。[方法]ヒト肝臓23検体におけるAADAC mRNAおよびタンパク質発現量をqRT-PCRおよびWestern blottingにより測定した。AADAC mRNAの3’-非翻訳領域(3'-UTR)に結合するmiRNAをコンピュータ解析により予測した。AADAC 3'-UTRを含むプラスミドを用いたルシフェラーゼアッセイにより、予測されたmiRNA recognition element (MRE)が機能的か調べた。3’-UTRを含むAADACを安定的に発現させたHEK293細胞株(HEK/AADAC+3’-UTR)を樹立し、miR-222-3pmimicを導入してタンパク質発現量を測定した。AADACのプローブ基質であるフェナセチンを用いてAADAC加水分解酵素活性をHPLCにより測定した。[結果および考察]ヒト肝臓23検体においてAADAC mRNAには約20倍、AADACタンパク質発現量には約137倍の個人差が認められた。両者の間に有意な正の相関関係(r = 0.4, p = 0.06)は認められなかったことから、AADACの発現制御に転写後調節が関与することが示唆された。コンピュータ解析により、AADACの発現調節に関与するmiRNA候補としてmiR-222-3pが挙げられた。ルシフェラーゼ活性は、miR-222-3p mimic導入により有意に減少し(45%)、AADAC 3'-UTR中のMREが機能的であることが示された。HEK/AADAC+3’-UTR細胞に、miR-222-3pを過剰発現させた時、AADACタンパク質発現量およびAADAC酵素活性が有意に低下(p < 0.001)したことから、miR-222-3pは翻訳抑制を介してAADACの発現を負に制御することが明らかになった。以上、本研究では、ヒトAADACの発現がmiR-222-3pにより調節されていることを明らかにした。miR-222-3p発現量には約11倍の個人差が認められ、miR-222-3pを介した発現制御機構がヒト肝臓における加水分解反応の変動要因となっていると考えられた。