ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-6細胞容積調節性アニオンチャネルの構成因子LRRC8Eの機能○川島健太郎、大野智恵、清水貴浩、藤井拓人、酒井秀紀(富山大院・薬・薬物生理学)【背景・目的】細胞容積調節性(VSOR)アニオンチャネルは、ほぼ全ての動物細胞に発現し、細胞増殖や細胞死などの生理機能において重要な役割を果たしている。近年VSORアニオンチャネルの構成因子としてleucine-rich repeat containing 8 (LRRC8) familyが報告された。LRRC8 familyにはAからEの5つのアイソフォームが存在し、これらがヘテロ複合体を形成することでチャネルとして機能すると考えられており、発現しているアイソフォームによりチャネルとしての性質が変化することが報告されている。このうちLRRC8Aの発現はVSORアニオンチャネルの複合体形成に必要不可欠であること、LRRC8Eの発現はVSORアニオンチャネル電流の大きさに影響を与えないが、脱分極側における時間依存的な不活性化過程を速めることが報告されている。本研究ではLRRC8Eがユビキタスに発現していることから、VSORアニオンチャネル機能に対するLRRC8E発現の役割に着目し、実験を行った。【方法】本研究では、ヒトLRRC8E cDNAを組み込んだDsRed共発現ベクターをヒト胎児腎臓HEK293T細胞およびヒト口腔癌KB細胞に強制発現させた。トランスフェクション24時間後に、蛍光顕微鏡下で赤色を発する細胞にパッチクランプホールセル記録法を適用した。LRRC8EおよびLRRC8Aの局在は免疫細胞染色および細胞表面ビオチン化実験により検討した。【結果・考察】LRRC8Eを強制発現させたHEK293T細胞における免疫細胞染色及び細胞表面ビオチン化実験により、LRRC8Eが原形質膜に発現していることを確認した。続いて、パッチクランプ法によりVSORアニオンチャネル電流に対するLRRC8E発現の効果を検討した。Mock細胞およびLRRC8E発現細胞において、浸透圧性細胞膨張によりVSORアニオンチャネル電流が生じたが、これまでの報告とは異なり、LRRC8E発現細胞においてこの電流が有意に減少した。そこでVSORアニオンチャネル機能に必須のLRRC8Aの原形質膜における発現をビオチン化実験により検討した結果、LRRC8Eを強制発現してもLRRC8Aの原形質膜における発現量は変化しないことがわかった。またKB細胞にLRRC8Eを強制発現させたところ、HEK293T細胞の場合と同様に、VSORアニオンチャネル電流の抑制が観察された。他方、LRRC8Eの強制発現がVSORアニオンチャネル電流の脱分極時に生じる時間依存的な不活性化に与える影響についてKB細胞を用いて検討した。脱分極刺激直後の電流と比較し、1秒後に電流が減少した割合を減衰率とし、評価に用いた。NMDG +を主たるカチオンとする溶液の場合、mock細胞では電流の不活性化が13%であるのに対し、LRRC8E発現細胞では54%と減衰率が有意に増大したことから、これまでの報告と同様、LRRC8EがVSORアニオンチャネルの不活性化過程を制御することがわかった。興味深いことに、NMDG +を、よりイオン半径小さいCs +に置換した溶液を用いると、mock細胞の減衰率は59%、LRRC8E発現細胞の減衰率は72%となり、共にNMDG +の場合に比べて有意に高かった。この結果から、LRRC8Eの効果が細胞外カチオンのイオン半径に依存する可能性が示唆された。以上の結果から、LRRC8EがVSORアニオンチャネルのネガティブレギュレーターとして機能する可能性、またLRRC8Eにカチオン結合部位が存在することで、VSORアニオンチャネル電流の不活性化が制御されている可能性が考えられた。本研究により、VSORアニオンチャネルの制御機構に対するLRRC8Eの新たな作用メカニズムが示唆された。