ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-07食物アレルギー病態モデルでの葛根湯経口投与と経口免疫療法の併用による粘膜型マスト細胞の脱顆粒抑制作用とその機序の検討○林美智慧、山本武、長田夕佳、門脇真(富山大和漢研・消化管生理学)【背景・目的】食物アレルギー(FA)は近年先進国で患者数が増加している疾患であるが、その根本的な治療法は未だ確立されていない。現在、食物抗原に対して持続的な免疫寛容を誘導する根本的な治療法として経口免疫療法(Oral immunotherapy: OIT)の研究が行われているが、OITは未だ安全性に問題があると共に、治療期間が長期にわたるにも関わらず治療効率も十分には高くない。我々は、アレルギー性消化器症状を発症するFA病態モデルを用いてOITモデルを作製し、OITモデルに葛根湯を併用することでFAに対する治療効率が亢進することを明らかにしている。さらに、FAの発症や病態形成に関与する重要なエフェクター細胞である粘膜型マスト細胞の脱顆粒抑制が治療効率亢進に寄与することを明らかにしている。そこで本研究では、粘膜型マスト細胞の活性化の抑制が葛根湯併用OITの治療効率を亢進する粘膜型マスト細胞の脱顆粒抑制に関与しているとの仮説を立て、その検証を行った。【方法】5週齢BALB/cマウスに卵白アルブミン(OVA)を水酸化アルミニウムゲルと共に腹腔内投与し全身感作を行い、2週間後からOVAを隔日経口投与しFA病態モデルを作製した。FA病態モデルに対し加熱OVAを8日間経口で漸増投与しOITモデルを作製した。葛根湯併用群では加熱OVA投与の1時間前に葛根湯(500mg/kg)を経口投与した。OIT後に症状の評価を行うと共に、結腸を摘出し免疫組織化学染色による粘膜型マスト細胞の発現解析やフローサイトメトリーによる粘膜固有層単核細胞(LPMC)中の粘膜型マスト細胞の解析を行った。【結果・考察】免疫組織化学染色による解析の結果、近位結腸において高親和性IgE受容体(FcεRI)が発現している細胞に粘膜型マスト細胞のマーカーであるMouse mast cell protease-1(mMCP1)の発現が重なった。従って、FA病態モデル近位結腸のFcεRI +細胞は殆どが粘膜型マスト細胞であることが明らかになった。そこで、フローサイトメトリーによりLPMC中のマスト細胞マーカーの1つであるckit陽性のFcεRI +細胞を粘膜型マスト細胞とした。現在、粘膜型マスト細胞の活性化マーカーは報告されていないため、結合組織型マスト細胞の脱顆粒及び活性化のマーカーとして報告されているCD63の粘膜型マスト細胞での発現について検討した。LPMCのckit + FcεRI +細胞でのCD63発現は、正常マウスよりもFA病態モデルで有意に高く(P<0.01、n=7-19)、FA病態モデルで脱顆粒を誘導するOVAの投与前後で変化しなかった(n=5-6)。従って、CD63の発現亢進は、粘膜型マスト細胞において活性化マーカーとなることが示された。さらに、葛根湯併用OITマウスではLPMCのckit + FcεRI +細胞におけるCD63発現はFA病態モデルに対し有意に低かった(P<0.01、n=14-19)。従って、葛根湯併用OITマウスでは粘膜型マスト細胞の活性化が抑制されていることが示された。【結論】葛根湯を併用したOITモデルにおいて、結腸の粘膜型マスト細胞の活性化が抑制されることにより粘膜型マスト細胞の脱顆粒が阻害され、それにより治療効率が亢進することが示唆された。