ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-9新規creatine transporterの輸送機能および発現局在解析○丹野優、赤沼伸乙、久保義行、細谷健一(富山大院薬)【目的】Creatineは骨格筋、脳および網膜に高濃度で存在しており、creatine kinaseによってphosphocreatineに変換されることで、エネルギー貯蔵物質として機能している。また、creatine代謝異常が精神発達遅延や錐体外路症状を引き起こすことが報告されており、各組織におけるcreatine濃度調節は生体機能を維持する上で必須である1)。Creatineは肝臓においてguanidinoacetate (GAA)から生合成されることが知られており、GAAは門脈周囲肝細胞の類洞側膜に発現するラットGABAtransporter 2 (GAT2/Slc6a13)を介して循環血液から肝臓に取り込まれることが示唆されている2)。しかしながら、肝臓で合成されたcreatineが肝臓から循環血液へ排出される機構は不明である。肝臓から循環血液へのcreatine排出機構を明らかにすることは、血中creatine濃度の維持に関する理解を向上させるものであると期待される。近年、monocarboxylate transporter 12 (MCT12/Slc16a12)がcreatineを輸送基質とすることや、肝臓においてmRNA発現を示すことが報告された3)。このことから、MCT12は肝臓における血中creatine濃度の調節に関与する可能性が考えられる。しかし、その生理的役割は明らかとなっておらず、さらに詳細な解析が求められている。本研究では、肝臓から循環血液へのcreatine排出機構の解明を目的として、MCT12のcreatine輸送機能および発現局在を解析した。【方法】Creatine輸送機能解析では、rat MCT12のcRNAをアフリカツメガエル卵母細胞(oocyte)に注入することでrMCT12発現oocyteを作製し、[ 14 C]creatineの取り込み解析および排出解析を実施した。rMCT12発現解析では、モルモットにrMCT12の抗原ペプチドを投与し、抗rMCT12ポリクローナル抗体を作製した。この抗体を用いて免疫組織化学染色を実施し、肝臓におけるrMCT12の発現を共焦点蛍光レーザー顕微鏡で解析した。【結果・考察】Oocyte発現系を用いた解析において、rMCT12 cRNA-injected oocyteの[ 14 C]creatine取り込みは時間依存性および濃度依存性を示し、そのK m値は240μMと算出された。また、Na +、Cl -および膜電位非存在下における[ 14 C]creatine取り込みが変化しなかった一方、細胞外pH上昇時に[ 14 C]creatine取り込みは増加傾向を示した。さらに、rMCT12 cRNA-injected oocyteからの[ 14 C]creatine排出は、water-injected oocyteに比して有意に増加した。以上の結果から、MCT12はイオンや膜電位を駆動力とせず、creatineを濃度勾配にしたがって両方向に輸送することが示唆された。rMCT12発現解析に用いる抗rMCT12抗体は、GFP融合rMCT12発現細胞を用いて認識性を評価した。GFP融合rMCT12由来のシグナルと抗rMCT12抗体由来のシグナルが一致したことから、作製した抗体はrMCT12に対して認識性を示すことを確認した。この抗体を用いた免疫組織化学的解析では、肝臓において、rMCT12に由来する強い蛍光シグナルが観察され、特に中心静脈周辺の肝細胞における発現量が多いことが示唆された。rMCT12がcreatineを濃度勾配にしたがって輸送すること、および肝臓の中心静脈周辺に発現していることから、肝臓から循環血液へのcreatine排出輸送にMCT12が関与していることが考えられる。【参考文献】1)Tachikawa et al. (2011) Fluids Barriers CNS. 8: 13.2)Tachikawa et al. (2012) PLoS One. 7: e32557.3)Abplanalp et al. (2013) Hum Mol Genet. 22: 3218-3226.