ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-10単純ヘルペスウイルス感染マウスにおける帯状疱疹関連痛に対するmethylcobalaminの効果○菊川孝,歌大介,安東嗣修(富山大・院薬)【背景・目的】帯状疱疹は後根神経節に潜伏感染していたヘルペスウイルス科に属する水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus; VZV)が再活性化することで発症し,80歳までに3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれている。VZVは初感染時,水疱瘡として発症し,症状の治癒後は後根神経節に不活性化の状態で潜伏感染する。加齢やストレスなどにより免疫力が低下した際に,VZVは再活性化し帯状の皮膚病変と疼痛を生じる。特に,衣服の擦れのような普段は「痛い」と感じない刺激に対して強い疼痛を感じるようになるアロディニア(allodynia)が臨床上の問題となっている。皮膚病変と疼痛は3?4週間ほどで治癒するが,10?45 %の患者において疼痛が長期間残存する帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia; PHN)が起こる場合がある。しかし,PHNの治療に有用な鎮痛薬はなく,そのコントロールは難航している。そこで,新規の鎮痛薬が求められている。メチルコバラミン(methylcobalamin; MeCbl)はビタミンB12の類似体である。様々な末梢神経障害に対して処方され,疼痛などの症状のコントロールに用いられる。そこで,本研究では,MeCblの帯状疱疹関連痛に対する効果を検討し,その疼痛抑制作用機序の一端の解明を試みた。【方法】実験には,雌性c57BL/6マウスを用いた。VZVは種特異性が高くマウスに感染しない為,同じヘルペスウイルス科に属する単純ヘルペスウイルス1型(herpes simplex virus type-1; HSV-1)をマウス後肢大腿部に経皮接種することで,ヒト帯状疱疹様の皮膚病変とアロディニアが発症するモデルマウス作製した。疼痛関連スコアは画用絵筆を用いて計測し,刺激に対する反応を以下のように分類した。0点:無反応,1点:後肢の引き上げ動作,2点:後肢の振り動作,舐め動作,または持続的な後肢の引き上げ動作とした。MeCblはウイルス接種後5日目から1日1回,吻側背部に皮下投与した。MeCbl投与当日の疼痛評価は,投与前と投与後1,3及び6時間に行い,投与翌日からはMeCblの投与前に行った。さらに,最終投与翌日も評価した。また免疫組織化学染色法を用いて,マウス後肢足跡における神経分布を観察した。【結果・考察】マウスにHSV-1を経皮接種すると,接種後5日目から皮膚病変があらわれ,20日目には消失した。また接種後3日目から疼痛があらわれ始め,7日目にはピークとなり(帯状疱疹痛),その後も疼痛は持続した(PHN)。MeCblをウイルス接種後5日目から連続投与すると帯状疱疹痛とPHNを用量依存的に抑制した。この抗アロディニア効果はMeCbl投与後1時間後から現れたことから,MeCblにはアロディニアに対する「急性効果」と「連続投与による効果」の異なる効果が存在することが示唆される。これまでにPHNを伴ったヒトやマウスにおいて,皮膚における感覚神経C線維の脱落が報告されている。HSV-1感染マウスの後肢足蹠の皮膚では,C線維の減少が認められた。一方,MeCblの連続投与は,この減少を抑制した。以上の結果より,MeCblは,帯状疱疹関連痛に有用であり,その疼痛抑制作用機序の一つにC線維の保護作用が示唆される。