ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-11ケトコナゾールによる肝障害における代謝物の寄与の解明○山田卓也、深見達基、飯田あずみ、後藤紗希、中島美紀(金沢大薬)【背景・目的】抗真菌薬ケトコナゾール(KC)を経口薬として使用した場合、稀に重篤な肝障害を発症することが報告されている。当研究室ではKCがアリルアセタミドデアセチラーゼ(AADAC)によって主代謝物であるN-デアセチルケトコナゾール(DAK)に代謝されることを明らかにしている。DAKはフラビン含有モノオキシゲナーゼ(FMO3)により代謝され、最終的に毒性が強いジアルデヒド体へ変換されることが示唆されている。しかし、ヒト肝がん由来細胞HepG2細胞に対するDAKの毒性はFMO3を過剰発現させることにより減弱したことから、FMO3を介した代謝経路は毒性発現ではなく、解毒に関与していることが示唆された。本研究では、ヒトにおけるKC肝毒性発現にFMO3以外の酵素が関与するか検証し、真の毒性発現メカニズムを解明することを目的とした。【方法】ヒト肝ミクロソーム(HLM)、ヒト肝サイトゾル(HLC)、ヒトP450発現系をDAKとインキュベートし、生成する反応性代謝物をシアン(CN)付加体としてトラップし、LC-MS/MSで検出した。また、種々のP450阻害剤を用い、反応性代謝物生成阻害を評価した。また、雌性C57BL/6Jマウス(8週齢)にDAKとL-buthionine-(S,R)-sulfoximine (BSO)を投与し、in vivoで肝毒性発現を評価した。【結果・考察】DAKをHLMとインキュベートした際にシアン付加体が検出された。その化合物の構造的特徴より、イミニウムイオン(N + )を有する反応性代謝物が生成していることが推測された。シアン付加体の生成量は反応系にホルムアルデヒドやメタノールを添加した際に約28倍および約5倍増大したことから、これらが一炭素供与体としてピペラジン環に作用し、反応性代謝物が生成すると考えられた。さらに、シアン付加体の生成量はNADPHを添加した際に高く認められたことから、その生成にP450が関与することが示唆された。反応性代謝物生成の責任酵素を調べるためにメタノール存在下でDAKとP450各分子種の発現系を反応させたところ、CYP2C19においてシアン付加体の生成量が最も高値を示した。また、HLMにおけるシアン付加体の生成はCYP2C19特異的阻害剤であるトラニルシプロミンによって強く抑制された。したがって、反応性代謝物の生成にはCYP2C19が関与することが示された。In vivoにおいても一炭素供与体が毒性発現に関与するか調べるため、マウスにホルムアルデヒド代謝酵素アルコールデヒドロゲナーゼ5 (ADH5)の機能を阻害するBSOを投与したところ、BSOとDAK共処置においてDAK単独投与よりも高い血中ALTおよびAST値が認められた。このことから、DAKによる毒性発現には一炭素供与体が関与していることがin vivoの検討においても支持された。以上、本研究では一炭素供与体の存在下でKCの主代謝物であるDAKがCYP2C19によりイミニウムイオンを有する反応性代謝物に変換され、それが強い肝毒性を示すことを明らかにした。CYP2C19発現量および遺伝子多型による酵素活性の個人差、食事や環境因子によるホルムアルデヒド等一炭素供与体の暴露などがKC誘導性肝障害の感受性に影響を与えることが示唆された。