ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-12血液脳関門を介した脳へのgabapentin輸送機構の解明○須河内剛志、赤沼伸乙、久保義行、細谷健一(富山大院薬)【目的】Gabapentinは抗てんかん薬であり、その薬理作用は脳神経細胞における電位依存性Ca 2+チャネルの阻害および脳内GABA量の増加促進である。一方で、gabapentinを用いた薬物治療において、これら薬理作用の発揮が不十分であるために、てんかん発作を抑制できないことが問題となっている。このgabapentin薬剤耐性を薬物動態学的観点から克服する戦略として、gabapentinを脳へ効果的に送達し、脳内gabapentinを治療効果の発揮できる濃度に維持することが考えられる。Gabapentinの循環血液から脳への移行過程は、血液脳関門(BBB)によって制御されている。BBBには各種トランスポーターが発現しており、循環血液-脳間の物質交換に機能している。Gabapentinは、BBBに発現するトランスポーターのうち、Na +非依存性L型アミノ酸トランスポーター1 (LAT1)およびNa +依存性有機カチオン/L-carnitineトランスポーター1 (OCTN1)の輸送基質となることが報告されている。近年、てんかん病態時において、BBBにおける一部トランスポーターの発現量変化が報告されており、gabapentinの脳移行メカニズムの解明は、gabapentin薬剤耐性てんかんの理解および患者への効果的なgabapentin薬物治療の提供につながると期待される。本研究は、ラットin vivoおよびin vitro両解析を通じ、BBBを介した循環血液から脳へのgabapentin輸送様式を解明することを目的とした。【方法】In vivoラット循環血液中から脳への[ 3 H]gabapentin輸送は、brain uptake index (BUI)法によって解析した。BBBにおける詳細な[ 3 H]gabapentin輸送は、in vitro BBBモデル細胞である条件的不死化ラット脳毛細血管内皮細胞株(TR-BBB13細胞)を用いて解析した。【結果・考察】循環血液から脳への[ 3 H]gabapentin移行性を表すBUI値は24%であり、本値はgabapentinの脂溶性から予測されるBUI値(9.0%)よりも高値であった。さらに[ 3 H]gabapentin脳移行は非標識gabapentinおよびLATの基質である2-amino-2-norbornanecarboxylic acidの10 mM共存下において、それぞれ68%および74%阻害された。従って、循環血液から脳へのgabapentin移行におけるLATの関与が示唆された。TR-BBB13細胞における[ 3 H]gabapentin取り込みは、濃度依存性を示し(K m = 574μM)、細胞外Na +の影響を受けなかった。細胞への[ 3 H]gabapentin取り込みに対する各種化合物の影響を評価したところ、LAT1の輸送基質であるD-leucineおよびD-phenylalanineなどによって、その取り込みは60%以上阻害された。一方で、他のNa +非依存性アミノ酸トランスポーターの輸送基質L-alanineおよびL-arginineやOCTN1の輸送基質acetyl L-carnitineはTR-BBB13細胞における[ 3 H]gabapentin取り込みを阻害しなかった。さらに、LATの細胞内外基質を交換輸送する特性がTR-BBB13細胞における[ 3 H]gabapentin輸送において示されるかを検証した結果、非標識gabapentinおよびLAT1基質であるD-leucine含有mediumによってインキュベーションしたところ、細胞内に取り込ませた[ 3 H]gabapentinの細胞外放出が、化合物非存在下に比して、それぞれ2.8倍および2.7倍促進された。本研究の結論として、LAT1がBBBを介した循環血液から脳へのgabapentin輸送を担う主要トランスポーター分子であることが示唆された。