ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

ページ
60/140

このページは 第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部 の電子ブックに掲載されている60ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-13ABCトランスポーターABCD1がもつアシルCoAチオエステラーゼ活性の解析○井林一紀1、川口甲介2、守田雅志2、今中常雄( 1富山大薬、2富山大院薬、3広島国際大薬)3【背景・目的】ABCトランスポーターD群に分類されるABCD1は、ペルオキシソーム膜に局在し、極長鎖脂肪酸CoAのペルオキシソーム内への輸送に関与している。ABCD1の機能障害は重篤な神経変性疾患である副腎白質ジストロフィー(ALD)を引き起こすが、ABCD1の極長鎖脂肪酸輸送メカニズムの詳細は不明である。近年、植物におけるABCD1のホモログであるCTSが脂肪酸CoAを加水分解するアシルCoAチオエステラーゼ活性を有し、その活性を欠損させた植物細胞では脂肪酸のβ酸化能が低下することが報告された。本研究では、ヒトABCD1のアシルCoAチオエステラーゼ活性について解析を行った。【方法】メタノール資化性酵母Pichia pastorisに、ヒトABCD1にHisタグを付加させた融合タンパク質を発現させた。発現させた融合タンパク質は、界面活性剤で可溶化した後、Hisタグアフィニティレジンで精製した。プロテオリポソームへの再構成には、大豆由来のリン脂質で作製したリポソームを用いた。ATPase活性はマラカイトグリーン法により測定した。アシルCoAチオエステラーゼ活性は、蛍光標識したNBD-パルミトイル-CoAを基質に用い遊離したNBD-パルミチン酸を薄層クロマトグラフィー(TLC)で検出することで測定した。【結果・考察】P. pastorisで発現させたHis-ABCD1は0.2%のβ-DDMで可溶化した。Hisタグアフィニティレジンにおける結合・溶出条件を最適化し、His-ABCD1を精製した。ABCD1を組み込んだプロテオリポソームを用いATPase活性を測定すると、ABCD1量と時間に依存した活性の増加が見られ、その活性はATPase阻害剤AlF 3によって阻害された。ABCD1が活性型としてリポソームに組み込まれたことが示唆された。つづいてチオエステラーゼ活性の測定を行ったところ、ABCD1量と時間に依存して遊離したNBD-パルミチン酸量の増加が確認できた。チオエステラーゼ活性の阻害剤について検討したところ、セリンエステラーゼ阻害剤やヒスチジン残基修飾試薬では阻害されなかったが、チオール阻害剤であるpCMBとAlF 3で阻害された。しかしATPase活性を持たない変異型ABCD1(K513A)がチオエステラーゼ活性を持つことから、ATPaseとチオエステラーゼの活性は独立していることが示唆された。さらに、変異体を用いてABCD1の持つアシルCoAチオエステラーゼ活性の活性中心のアミノ酸残基について解析を行っている。