ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-14新規痒み因子β2マイクログロブリンの発見と痒み発生機序○牧俊人、李嗣凱、歌大介、安東嗣修(富山大・院薬)【背景・目的】血液透析患者の主な症状に激しい痒みがあり,そのコントロールは患者の生活の質の低下を防ぐためにも重要である。しかし,透析患者の痒みには,痒みの第一選択薬として抗ヒスタミン薬が用いられるが,無効である場合が多い。このことは,透析患者の痒みへのヒスタミンの関与は小さいと考えられ,新規の痒み因子の存在が示唆される。?2-micro globulinは低分子量たんぱく質で,腎機能が低下すると血漿中濃度が増加するが透析では除去されにくいことが知られている。そこで本研究では,?2-micro globulinが痒み因子であるのか,また,その痒みの発生機序に関してマウスを用いて検討した。【方法】実験には,雄性ICR系マウスを用いた。?2-Micro globulinを予め除毛しておいたマウス吻側背部に皮内注射し,その後の行動を無人環境下にビデオ撮影した。ビデオの再生により注射部位およびその近傍への後肢による掻き動作をカウントした。一部の実験では,頬への?2-micro globulinを皮内注射した。さらに,?2-micro globulinの一次感覚神経への直接作用を調べるために,マウス後根神経節ニューロンの初代培養を用い,興奮した神経の指標としてリン酸化Erkの免疫活性をモノクローナル抗体を用いた蛍光染色により調べた。【結果・考察】?2-Micro globulinのマウス吻側背部への皮内注射により,溶媒注射群と比べて有意に掻き動作が増加した。一方,熱変性させた?2-micro globulinでは,掻き動作は起こらなかった。また,μオピオイド拮抗薬naltrexone hydrochlorideにより抑制され,さらに,頬への?2-micro globulinの皮内注射により後肢による掻き動作が誘発されたことから,この動作が痒みに起因した動作であることが示唆される。?2-Micro globulin誘発の掻き動作は,H1ヒスタミン受容体拮抗薬,TPトロンボキサン受容体拮抗薬,BLTロイコトリエン受容体拮抗薬,及びプロテアーゼ活性受容体2拮抗薬では抑制されなかった。ところで,カプサイシン受容体であるTRPV1発現一次感覚神経は痒みの伝達に関与することが知られている。そこで,繰り返えしカプサイシン処置によりTRPV1発現神経を脱感作させると,?2-micro globulin皮内注射は掻き動作を誘発しなかった。このことは,?2-micro globulin誘発の掻き動作にTRPV1発現一次感覚神経が関与していることが示唆される。また,一次感覚神経の初代培養ニューロンへ?2-micro globulinを作用させるとTRPV1陽性ニューロンにErkのリン酸化が認められた。以上の結果から,?2-micro globulinは,直接TRPV1発現一次感覚神経に作用することで痒み反応を誘発することが示唆される。