ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-16プロスタグランジン輸送体OATP2A1/SLCO2A1によるPGE 2の細胞内動態調節作用〇清水淳也、御勢智香、中村吉伸、中西猛夫、玉井郁巳(金大院・薬)【背景・目的】OATP2A1/SLCO2A1は、プロスタグランジン(PG)E 2に高い選択性を示す輸送体であり、細胞膜表面のPGE 2受容体近傍のPGE 2濃度調節に関与する。COX/PGES系により産生されたPGE 2は細胞外へ放出され、細胞膜に発現する受容体に結合し作用を示す。細胞間隙中のPGE 2はOATP2A1を介して細胞内に取り込まれ、代謝酵素15-PGDHによって分解される[1]。一方、PGE 2を分泌する肺胞上皮細胞や腎集合管細胞、マクロファージ(Mφ)においてOATP2A1が細胞内に発現するが[2, 3]、細胞内OATP2A1の役割は不明である。当研究室では、Oatp2a1欠損マウス(Slco2a1 -/- )を用いた検討により、OATP2A1がPGE 2分泌に関与することを報告した[4]。本研究ではPGE 2細胞内動態におけるOATP2A1の役割について、Slco2a1 -/-由来腹腔Mφ(PMφ)およびマウスMφモデル細胞RAW264細胞を用いて検討した。【方法】一定時間、リポ多糖(LPS)で活性化したRAW264およびマウス由来PMφから培養液を採取し、細胞溶解液を調製した。培養液、細胞溶解液中PGE 2およびその代謝物(PGEM: 15-keto PGE 2、13,14-dihydro-15-keto PGE 2および13,14-dihydro-15-keto PGA 2 )はLC-MS/MSを用いて測定した。OATP2A1阻害剤としてTGBzおよびBSPを用い、OATP2A1がPGE 2分泌および代謝に及ぼす影響を評価した。【結果・考察】LPS処置12時間後のSlco2a1 -/-マウス由来PMφ培養液中PGE 2量はSlco2a1 +/+に比べ有意に低値を示した。総PGEM量はSlco2a1 -/- PMφにおいて有意に増加し、総PGE 2量に対する総PGEM量の比(PGEM/PGE 2 )は2.8倍高値を示した。さらに、LPS処置12時間後のRAW264細胞において、PGEM/PGE 2はTGBzの存在下で3.2倍有意に増加した。したがって、OATP2A1の機能抑制によりPGE 2の代謝が促進されることが示唆された。一方、LPS処置したRAW264細胞に重水素標識体d4-PGE 2を添加し、d4-PGEMを測定した。TGBz処置と未処置の間に有意な変化はみられず、MφにおいてOATP2A1は細胞外PGE 2の取り込みおよび代謝には関与しないことが示唆された。OATP2A1の化学的および遺伝的阻害によりMφにおけるPGEMの産生が増加したことから、細胞内OATP2A1は新規に合成されたPGE 2の細胞内動態を制御することで、PGE 2代謝回避に働き、効果的なPGE 2分泌に関わることが示唆された。【参考文献】[1] Nomura T. et al., Mol. Pharmacol., 65:973-8 (2004)[2] Ridsdale R. et al., PLoS One, 6:e16482 (2011)[3] Bao Y. et al., Am. J. Physiol. Renal Physiol. 282:F1103-10 (2002)[4] Shimada H. et al., Biochem. Pharmacol., 98:629-38 (2015)