ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-17Keratinocyteにおける膜輸送体の発現とレゴラフェニブ分布に及ぼす影響〇島田和弘1)、増尾友佑1)、藤田健一2)、山﨑絵里名1)、中道範隆1)、佐々木康綱2)、加藤将夫1)1)金沢大学医薬保健研究域薬学系2)昭和大学腫瘍分子生物学研究所【背景・目的】抗がん剤regorafenibは、結腸、直腸、肝細胞がんの治療に用いられる経口のマルチキナーゼ阻害薬である。Regorafenibの代表的な副作用に手足症候群(hand-hoot skin reaction; HFSR)があり、HFSRの発症はregorafenibの減量や投薬中止をもたらす場合がある。Regorafenib投薬患者におけるHFSRの発現頻度は、約50%と非常に高いものの、HFSRの発現機序は未だ不明であり、regorafenibによる抗がん治療の妨げとなっている。Regorafenibは皮膚組織に分布するが、regorafenibによるkeratinocyteでの細胞毒性、およびkeratinocyteへのregorafenibの分布に寄与しうる膜輸送体は解明されていない。そこで、本研究では、keratinocyteへのregorafenibの細胞内蓄積が起こるかどうかを解明するとともに、そのメカニズムや細胞毒性、HFSR発症との関連を明らかにすることを目指し、regorafenibの皮膚への分布に寄与する膜輸送体の探索を目的とした。【方法】マウス新生児より初代培養keratinocyteを単離・培養し、regorafenibと活性代謝物であるM-2とM-5、構造類似薬sorafenibを24時間暴露させた後、細胞内ATPを定量し、各化合物による細胞毒性を評価した。マウス初代培養keratinocyteにおける膜輸送体のmRNA発現をqPCRで網羅的に定量した。マウス初代培養keratinocyteを、regorafenib、M-2、M-5、sorafenibに一定時間暴露させた後の細胞内濃度をLC-MS/MSで定量することで、各化合物の細胞内取り込みを比較した。【結果・考察】マウス初代培養keratinocyteに対するregorafenib、M-2、M-5、sorafenibの細胞毒性を比較したところ、regorafenibのIC 50は2μM以下、sorafenib、M-2、M-5は8μM以上であり、regorafenibによる毒性が最も強かった。ヒト臨床におけるregorafenibの最大血漿中濃度は約5μM程度であることから、臨床濃度域のregorafenibがkeratinocyteに対して直接的な細胞毒性を生じさせることが示唆された。また、regorafenibとsorafenibは平均血漿中濃度がほぼ等しい一方、regorafenibのHFSRの発現頻度はsorafenibよりも高いという臨床知見とも対応したことから、keratinocyteへの細胞毒性がHFSRの一因である可能性がある。マウス初代培養keratinocyteでmRNA発現が比較的高かった膜輸送体は、Abcb1b, Abcg2, Abcc1, Abcc3, Abcc4, Abcc5, Slc22a4などであった。薬物等の排出に関与するABC (ATP-binding cassette)スーパーファミリーの発現が比較的高く、regorafenibを輸送するAbcb1およびAbcg2もmRNA発現が確認された。一方、SLC (solute carrier)スーパーファミリーはmRNA発現が少ない傾向にあった。Regorafenibのマウス初代培養keratinocyteへの取り込みは、時間依存的であり、取り込み量はM-2やM-5よりも高かった。さらにATP枯渇剤のロテノンを添加すると、regorafenibの取り込み量は増加した。この原因の一つとして、regorafenibのkeratinocyteからの排出に関わるABC膜輸送体の活性が細胞内ATPの枯渇に伴い阻害される可能性が考えられ、細胞毒性によるATPの減少がさらなるregorafenibの細胞内蓄積につながることが示唆された。Regorafenibのkeratinocyteからの排出輸送活性が細胞毒性に関連することが示唆されたため、今後、keratinocyteに機能的に発現するregorafenibの排出膜輸送体を探索することが重要である。【結論】Regorafenibは、ヒト臨床血漿中濃度でマウスkeratinocyteに細胞毒性を生じることが明らかになった。Keratinocyteには、regorafenibの排出輸送に関与しうる膜輸送体が発現しており、その輸送活性がregorafenibの細胞内濃度や細胞毒性の規定因子の一部であることが示唆された。