ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-18DPP4阻害剤による脂肪組織の血管新生制御を介した肥満抑制効果の検討○渡邊愛理,和田努,小野木康弘,小寺優理,恒枝宏史,笹岡利安富山大学病態制御薬理学【目的】肥満に伴い白色脂肪組織は血管新生に依存してその体積を変化させる。我々は、肥満病態の脂肪組織における血管新生と肥大化進展に対するPDGF-Bの重要性を示してきた。間質細胞由来因子1(SDF1)は心筋や下肢の虚血に際し、血管内皮前駆細胞の遊走を促進する血管新生因子であるが、肥満に伴う白色脂肪組織の血管新生への関与は不明である。PDGF-Bは血管周囲に存在するペリサイト(PCs)の局在を変化させて血管新生を制御することから、内臓脂肪組織の血管新生におよぼすSDF1の作用、およびSDF1とPDGF-Bの相互作用による影響をPCsの局在に着目し解析した。【方法】C57BL/6JマウスおよびPDGFR?欠損マウス(KO)から単離した白色脂肪組織を5ミリ角に断片化し、内臓脂肪組織の組織培養を行った。培養脂肪組織にPDGF-BおよびSDF1を24時間処置し、Whole-mount免疫染色法により血管内皮細胞およびPCsを染色後、共焦点レーザー顕微鏡によりPCsカバー率を算出した。またSDF1のin vivoでの影響は、SDF1を分解するDPP4の阻害剤Anagliptinを0.1%および0.3%含有する通常食および高脂肪食をC57BL/6Jマウスに12週間給餌し解析した。脂肪組織肥大化、血管新生および個体の糖代謝に与える影響を検討し、Flow cytometryにより内臓脂肪組織から血管内皮、PCs、マクロファージを単離し、各細胞の遺伝子発現解析を行った。【結果】内臓脂肪組織の成熟血管は、血管内皮細胞に接着するPCsが内皮細胞の増殖を抑制することで安定化している。培養脂肪組織において、内臓脂肪組織に対するPDGF-BおよびSDF1の単独処置は血管内皮細胞からのPCsの脱離を促進した。一方、PDGF-BとSDF1の共処置はPCsの脱離を抑制した。またPDGF-Bを高発現する肥満マウス由来の培養内臓脂肪組織に対するSDF1の処置においても、PCs脱離が抑制された。しかしKO由来の脂肪組織ではSDF1によりPCsは脱離した。高脂肪食負荷マウスの内臓脂肪において、PCsの血管からの脱離促進に伴い血管新生が促進されたが、KOマウスではPCsの脱離が抑制されていたことから、生体においてもPDGF-Bが肥満に伴うPCsの脱離を促進すると考えられた。高脂肪食負荷マウスに対するAnagliptinの投与は、脂肪組織におけるSDF1蛋白発現を増加し、脂肪組織血管からのPCsの脱離は低下した。その結果、内臓脂肪血管面積は低下し、内臓脂肪体積、体重増加、脂肪細胞の肥大化および慢性炎症の進展は有意に抑制され、耐糖能異常の改善を認めた。SDF1とPDGF-Bの共存在下でPCsが血管に接着するメカニズムを解析するため、Anagliptinを投与したマウスの内臓脂肪組織から血管内皮、PCs、マクロファージを単離し各細胞における血管新生因子の発現を検討したところ、高脂肪食負荷の内臓脂肪では浸潤するマクロファージにおいてPDGF-B産生が増加し内皮細胞のPDGF-B発現が低下することでPCsは内皮細胞から脱離するが、SDF1処置により内皮細胞のPDGF-B発現が増加することでPCsの内皮への接着が維持され、血管新生が抑制されると考えられた。【結論】肥満病態に重要な脂肪組織肥大化に関わる血管新生進展を制御する鍵分子として、SDF1の新規作用を突き止めた。肥満病態に対する抗糖尿病薬DPP4阻害剤は、インクレチン作用により糖代謝を改善することに加え、SDF1の分解抑制により内臓脂肪組織の血管新生を抑制し、肥満の進展を効果的に抑制する可能性が示された。