ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-19モノ核酸関連化合物の網羅的定量による消化管吸収評価○小池彩花、増尾友佑、中道範隆、加藤将夫(金沢大学・薬・分子薬物治療学)【背景】核酸は、生体の機能維持において必須な化合物群である。ヌクレオチドはde novo経路により内因的に合成することができるものの、de novo経路によるヌクレオチド合成はATPを消費するため、生体に必要とされるヌクレオチド全てをde novo経路で合成するのは非効率的である。ヌクレオチド合成経路には、de novo経路以外にも、食餌から摂取された核酸が消化管で吸収されてヌクレオチド合成に利用されるsalvage経路が存在する。遊離塩基およびヌクレオシドは、拡散型ヌクレオシドトランスポーター(ENT)、濃縮型ヌクレオシドトランスポーター(CNT)の基質であり、これらのトランスポーターは消化管に発現する。経口摂取された核酸はポリヌクレオチドからモノヌクレオチドに加水分解され、小腸内でリン酸基が外れヌクレオシドとなり、さらに糖が外れて遊離塩基となる。消化管吸収される核酸の大部分がヌクレオシドであることがin vitroの実験から示唆されている。しかし、in vivoで、塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチドのどの分子の形でどの程度消化管吸収されるかを系統的かつ定量的に解明した報告例はない。核酸は、抗酸化作用や免疫機能促進、肝保護効果などを有することから、機能性食品としても着目されている。したがって、どの核酸が吸収されやすいかを示すことで、核酸の生体内での効率的な利用につながる可能性がある。そこで、本研究では核酸の消化管吸収を評価すべく、経口投与後の核酸および関連代謝物を網羅的に測定し、その取り込み形態を解明することを目的とした。【方法】ICRマウスに、モノ核酸として遊離塩基(adenine, cytosine, guanine, thymine, uracil)、デオキシモノヌクレオシド(deoxyadenosine, deoxycytidine, deoxyguanosine, thymidine, deoxyuridine)、デオキシモノヌクレオチド(dAMP, dCMP, dGMP, dTMP, dUMP)をそれぞれ経口投与し、経時的に採血した。モノ核酸(遊離塩基、ヌクレオシド、モノヌクレオチド)の血漿中濃度と肝臓、腎臓、脳組織中濃度をLC-MS/MSで網羅的に測定した。分子構造が類似したモノ核酸化合物はLCで分離することで、区別して正確に定量することを試みた。これにより、核酸の種類、形態による吸収の影響を調べた。【結果・考察】マウスに遊離塩基を経口投与したところ、cytosineが血漿および肝臓中で、非投与群よりも有意に上昇し、cytosineが吸収されやすい遊離塩基であることが示唆された。Guanosineは、投与はしていないものの、血漿中濃度が有意に上昇しており、投与したguanineが代謝されて生じたguanosineが上昇した可能性が示された。デオキシヌクレオシドを経口投与したところ、thymidine, deoxycytidineは血漿中で有意に上昇した。また、デオキシヌクレオチドを経口投与したところ、ヌクレオチドの血漿および臓器中濃度の上昇は生じなかった。一方、核酸の摂取による肝臓や免疫系での機能亢進が報告されていることから、摂取された核酸の多くが小腸や肝臓で利用され、本研究で定量した以外の代謝物に変換される可能性もある。また、消化管内で他の代謝物に変換されたのちに吸収されている可能性もあり、尿酸やジヒドロウラシル等の濃度変化も測定する必要がある。【結論】核酸の消化管吸収形態として、遊離塩基が吸収されやすいことがin vivoの実験から示唆された。遊離塩基とヌクレオシド、ヌクレオチドなど、これらの代謝物間の定量的な比較に関してさらなる検討が必要である。