ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

ページ
67/140

このページは 第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部 の電子ブックに掲載されている67ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AS-20活性化T細胞死(AICD)とNFAT活性化におけるCD28分子の効果○深谷将太郎、清水大地、松永司、猪部学(金沢大院薬)【背景・目的】生体防御において重要な役割を果たすT細胞は、抗原によるTCR/CD3複合体および補助シグナル分子CD28の刺激により、活性化して増殖する。その後T細胞は、効果の発現に伴い大部分はアポトーシスによる細胞死(AICD)を引き起こす。このアポトーシスの役割は、免疫応答の終息だけでなく、生体内の細胞数維持による恒常性維持にも重要であると考えられる。過去の報告において、T細胞のアポトーシスは、細胞内のシグナル伝達に関わるカルシニューリン(CN)に結合して下流シグナル活性化を阻害するTacrolimusの処理によって抑制されることから、CN下流因子のアポトーシスへの関与が考えられている。CNの直接的な下流因子であるNFATは、CNによる脱リン酸化により核内に移行してIL-2やIL-2Rなどの転写を促進する。CD28分子は、T細胞増殖誘導時にこの反応に促進的に作用することが示されているものの、AICD誘導時には細胞死を抑制することも報告されており、AICD誘導におけるCD28とNFATの関係には不明な点が多い。そこで本研究では、T細胞ハイブリドーマ株であるDO11.10細胞を用いて、この点について詳しく解析した。【方法】AICDのモデルとして利用されるマウスT細胞ハイブリドーマであるDO11.10細胞を用い、抗CD3抗体単独刺激時あるいは抗CD3抗体+抗CD28抗体刺激時における転写因子NFATc1およびNFATc2の細胞内局在を免疫染色と共焦点レーザー顕微鏡により解析した。また細胞死については、刺激条件下で一定時間培養した細胞をpropidium iodide (PI)で染色し、フローサイトメーターにより解析した。【結果・考察】NFATには4種類のサブファミリーが存在し、このうちT細胞ではNFATc1とNFATc2が重要であると考えられている。この2種類のNFATについて核内移行解析を行ったところ、NFATc1,NFATc2ともに未刺激状態では細胞質に局在し、抗CD3抗体刺激後はNFATc2のみで核内への移行が見られた。NFATc2の核内移行は刺激後1時間まで上昇し、その後減少した。この抗CD3抗体刺激時にTacrolimusを処理すると、NFATc2の核内移行は顕著に抑制された。次に、抗CD3抗体+抗CD28抗体刺激を行ったところ、同様にNFATc2の核内移行が観察されたが、興味深いことにTacrolimusによる抑制には抵抗性を示した。CD28は、T細胞増殖誘導時にGSK-3を抑制してNFATの脱リン酸化状態を維持し、核外排出を抑制することが示されているため、AICD誘導時においても同様の効果を示す可能性がある。現在、細胞死の誘導におけるCD28分子刺激の影響について解析中であり、合わせて報告する予定である。