ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

ページ
70/140

このページは 第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部 の電子ブックに掲載されている70ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-1TRPV1チャネルの外向き電流に対する細胞内ATPの効果○柳瀬宣広1清水貴浩2藤井拓人2榊原陽香1酒井秀紀2( 1富山大・薬, 2富山大院・薬)【背景・目的】感覚神経、脳、皮膚、心臓、肺、肝臓など様々な臓器に発現しているTransient receptor potentialvanilloid 1 (TRPV1)はTRPVファミリーに属しており、6回膜貫通構造を持つ非選択性カチオンチャネルとして機能する。また、TRPV1はトウガラシの主成分であるカプサイシンや、熱、プロトンなどの刺激によって活性化するため、痛覚を仲介する受容器として知られている。これまでに、カプサイシンによって活性化したTRPV1内向き電流が細胞内ATPを付加することで亢進することが報告されている。しかしながら、カプサイシン非存在下で観測されるTRPV1外向き電流に対する細胞内ATPの効果については検討されていない。本研究では、TRPV1外向き電流が細胞内ATPにより制御されることを見い出し、細胞内ATPの作用機序に関する検討を行った。【方法】ヒト脳由来のTRPV1 cDNAを組み込んだGFP共発現ベクターを、ヒト胎児腎臓由来HEK293T細胞に強制発現させた。トランスフェクション24時間後、パッチクランプホールセル記録法により、TRPV1チャネル電流を測定した。TRPV1発現細胞はGFP蛍光を指標に、顕微鏡下で選別した。【結果・考察】TRPV1外向き電流に対する細胞内ATPの効果について検討した。0.5 mM、2 mM、5 mM ATPを含んだピペット溶液をそれぞれ用いたところTRPV1外向き電流は、細胞内ATP濃度が高くなるにつれて増加した。また、観測されたTRPV1外向き電流は時間依存的な活性化を示した。そこで、+100 mVにおける電流値を2つの指数関数でフィットし、時定数を算出した。結果、細胞内ATP濃度が高くなるにつれて時定数は有意に小さくなった。また、TRPV1電流をボルツマン式にあてはめてプロットしたところ、TRPV1活性化の電位依存性は細胞内ATP濃度が高くなるにつれて低電位側にシフトした。以上の結果から、TRPV1の電位依存性ゲーティングは、細胞内ATPによって正に調節されていることが示唆された。次に細胞内ATPのTRPV1電流に対する作用機序の検討を行った。TRPV1に細胞内ATPの結合サイトがあることから、加水分解を受けないATPアナログであるAMP-PNPを用いたが、TRPV1外向き電流は見られなかった。このことから、細胞内ATPのTRPV1電流に対する作用には、細胞内ATPの加水分解が必要であることが示唆された。また、ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PI(4,5)P 2)がTRPV1チャネルを制御することが報告されている。そこで、ホスファチジルイノシトール(PI)からPI(4,5)P 2の生成に必要な酵素であるホスファチジルイノシトール4-キナーゼ(PI4K)を阻害するLY294002を用いて実験を行った。ピペット溶液に300μM LY294002を用いると、ATP依存的なTRPV1外向き電流の増加が抑制された。以上の結果から、細胞内ATPはTRPV1チャネルに対してPI(4,5)P 2の生成経路を介して間接的に作用していることが示唆された。TRPV1チャネルの外向き電流は、細胞内ATP濃度が低下する虚血性心疾患に関与している可能性がある。