ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-2ペルオキシソームの機能障害が肥満病態に与える影響の解析○長谷川颯1和田努1渡邊愛理1守田雅志2恒枝宏史1笹岡利安1富山大学薬学部病態制御薬理学1、分子細胞機能学2【目的】ペルオキシソームは炭素鎖22以上の極長鎖脂肪酸や分岐脂肪酸のβ酸化、エーテル型リン脂質や胆汁酸の生合成などを担っており、生体の脂質代謝の恒常性維持に重要なオルガネラである。ペルオキシソーム膜上には基質輸送に関わるATP BindingCassette Protein Subfamily D (ABCD) 1 ? 3が存在し、各ABCDタンパク質の機能欠損はペルオキシソーム機能に障害を引き起こす。しかし、ペルオキシソームの機能障害がマウス個体の糖・脂質代謝におよぼす影響は不明である。そこで本研究では全身ABCD1欠損マウス(KO)に高脂肪食負荷(HFD)を行い、ABCD1タンパク質の欠損が肥満病態に与える影響について解析した。【方法】8週齢の雄性KOおよび対照マウス(WT)をそれぞれ通常食または60%高脂肪食で飼育する4群(WT, WT-HFD, KO, KO-HFD)の実験群を作製した。12週間の食餌負荷を行い、その代謝表現型を解析した。糖代謝は糖負荷試験およびインスリン負荷試験にて、エネルギー代謝は小動物代謝計測システムおよび直腸温の測定により検討した。マウスを解剖後、各組織のmRNA発現はreal-time PCRにて測定した。フローサイトメトリーにより内臓脂肪組織(eWAT)のマクロファージ(Mφ)の極性を検討し、セルソーターを用いてM1またはM2Mφを分取し、各ABCD(ABCD1 -3)のmRNA発現を検討した。【結果】KOは通常食およびHFDのいずれにおいてもWTと比し有意な体重増加を示した。KOは通常食下では耐糖能およびインスリン感受性に影響を示さなかったが、HFD負荷下ではWTに比しさらなる糖代謝の悪化を認めた。これに一致し、深部体温および暗期におけるマウスの酸素消費量(VO2),二酸化炭素排泄量(VCO2)は共にWT-HFDに比しKO-HFD群で低下傾向を認めた。一方、摂餌量には変化を認めなかった。内臓脂肪に浸潤するMφおよび炎症性M1 Mφ(F4/80 + CD11c + CD206 - )は、WT-HFDに比しKO-HFDでさらに増加した。その結果、WT-HFD群で増加する内臓脂肪組織のTumor necrosis factorα(TNFα)発現はKO-HFD群でさらなる増加を認めた。内臓脂肪組織におけるABCD1-3のmRNA発現を検討したところ、ABCD1,2の発現はWT-HFD群ではWTに比し有意な増加を示し、ABCD3も増加傾向を示した。一方KO-HFD群のABCD2,3の発現はWT-HFD群と比し増加傾向および有意な増加を認めた。さらに単離した脂肪組織のM1およびM2 MφにおいてもHFD負荷によりABCD1の有意な増加およびABCD2,3の増加傾向を認め、KO-HFD群ではWT-HFD群と比べさらなるABCD2,3の増加および増加傾向を認めた。【結論】ABCD1欠損マウスはエネルギー代謝の低下に伴い肥満を呈し、HFD負荷に対して内臓脂肪組織の慢性炎症の増悪と顕著な糖代謝の悪化を認めることから、ABCD1のエネルギー・糖代謝への重要性が示された。また、MφのABCD発現はHFD負荷により増加し、ABCD1欠損により他のABCDタンパク質の発現が増加することから、代償機構の存在が示唆された。