ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-3網膜毛細血管内皮細胞における酸性小胞内蓄積機構とカチオン性薬物輸送への影響○粉川紗季1、赤沼伸乙1, 2、久保義行1, 2、細谷健一1, 2( 1富山大薬、2富山大院薬)【目的】網膜は視覚を担う神経組織であり、網膜疾患の重篤化は失明を引き起こす。近年、複数のカチオン性薬物が網膜神経保護作用を有することが示唆されており、血液網膜関門(blood-retinalbarrier; BRB)を介した循環血液から網膜へのカチオン性薬物送達が、新たな網膜疾患治療の確立につながると期待されている。これまでに、網膜神経保護作用を有するpropranololやclonidineなどのカチオン性薬物が内側血液網膜関門(inner BRB)に発現する輸送担体を介して循環血液から網膜へ輸送されることが示唆されている。一方、一部の脂溶性カチオン性薬物は単純拡散によって細胞内移行した後、その物理化学的性質に従って、lysosomeなどの酸性小胞内へ蓄積することが知られており、この蓄積機構がinner BRBを介したカチオン性薬物輸送に影響を及ぼす可能性が考えられる。本研究では、quinacrineをプローブ化合物として、inner BRBにおけるカチオン性薬物の酸性小胞内蓄積機構を解析した。【方法】Inner BRBのモデル細胞である条件的不死化ラット網膜毛細血管内皮細胞株(TR-iBRB2細胞)におけるquinacrine取り込みを蛍光強度測定によって解析した。また、quinacrineの細胞内局在は、共焦点蛍光レーザー顕微鏡を用いて解析した。さらに、代表的な酸性小胞であるlysosomeへのカチオン性薬物の移行性を検証するため、lysosome濃縮画分を密度勾配遠心法によって調製し、そのquinacrine取り込みに対する各種カチオン性薬物の影響を解析した。【結果・考察】TR-iBRB2細胞におけるquinacrine取り込みは経時的に増加し、取り込み時間30分におけるcell/medium ratioはTR-iBRB2細胞の細胞容積の約500倍と高値を示したことから、網膜毛細血管内皮細胞においてquinacrineは濃縮的に取り込まれることが示唆された。また、TR-iBRB2細胞におけるquinacrine取り込みは、lysosome内pHを上昇させるNH 4Cl共存下で有意に47%低下した。細胞内局在解析においてquinacrineは細胞内で点状に分布し、これはV-ATPaseの特異的阻害剤であるbafilomycin A1処理によって減弱した。V-ATPaseは酸性小胞内のpH環境維持に寄与することから、網膜毛細血管内皮細胞へのカチオン性薬物取り込みにおける酸性小胞内への蓄積機構の関与が示唆された。さらに、TR-iBRB2細胞へのquinacrine取り込みは、カチオン性薬物であるpropranolol, verapamil, pyrilamineおよびnicotine共存下で有意に20~45%低下した。同様に、lysosome濃縮画分へのquinacrine取り込みは、propranololおよびverapamil共存下でそれぞれ有意に28%および52%低下した。Inner BRBにおいてこれらカチオン性薬物の細胞内移行は主に担体介在輸送に依ることが示唆されており、本研究の結果から、propranololやverapamilなどの一部のカチオン性薬物は、細胞内移行後にlysosomeなどの酸性小胞へと分布することが示唆された。