ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

ページ
73/140

このページは 第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部 の電子ブックに掲載されている73ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-4ストレス負荷によるコカイン欲求増強における内側前頭前野ノルアドレナリン神経伝達の関与〇和田進太郎、柳田淳子、堂本将輝、笹瀨人暉、張?、松下夏子、出山諭司、檜井栄一、金田勝幸(金沢大院・薬)【背景・目的】薬物依存症患者では、ストレスをきっかけとして、依存性薬物に対する渇望感が生じ、再び摂取してしまう再燃が大きな問題となっており、再燃メカニズムの解明が求められている。当研究室ではこれまでに、ラットに急性拘束ストレスを負荷することでコカイン欲求行動が増強されることを報告してきた。一方、内側前頭前野(medial prefrontal cortex, mPFC)でのノルアドレナリン(NA)神経伝達は、報酬関連情報処理やストレス応答への関与が示唆されているが、ストレス負荷によるコカイン欲求行動の増強への関与は分かっていない。そこで本研究では、行動薬理学的および電気生理学的手法を用いて、この点を検討した。【方法・結果】行動実験には雄性C57BL/6Jマウス(8~12週齢)を用い、コカインによる条件付け場所嗜好性試験を行った。低用量(3 mg/kg, i.p.)のコカイン条件付けでは、ポストテストにおいて弱い場所嗜好性が誘導されたが、ポストテストの直前に30分間の拘束ストレスを負荷したところ、場所嗜好性が顕著に増大した。拘束ストレス負荷時にmPFCではNA神経伝達が亢進することが報告されていることから、次にmPFCニューロンに対するNAの作用を検討した。C57BL/6Jマウス(3~8週齢)からmPFCを含む脳スライス標本を作製し、V層錐体細胞からホールセルパッチクランプ記録を行った。NA(10μM)のバス適用は脱分極性電流を誘導するとともに、自発性興奮性シナプス後電流(spontaneousexcitatory postsynaptic current, sEPSC)の頻度を有意に増加させた。これらの興奮性作用は、α1受容体拮抗薬テラゾシン(5μM)の前処置により抑制された。電位依存性Na +チャネルブロッカーであるテトロドトキシン(0.5μM)存在下でもNA適用により脱分極性電流は誘導されたが、微小EPSC(mEPSC)頻度の増加は認められなかった。α1受容体作動薬フェニレフリン(100μM)の適用は、NAと同様に脱分極性電流を誘導するとともに、sEPSC頻度を増加させた。次にこれらのα1受容体を介したmPFCニューロンの興奮性の上昇が、ストレス負荷によるコカイン誘導性場所嗜好性の増大に関与しているか否かを検討するため、拘束ストレス負荷の直前にテラゾシン(2.5 nmol/0.2μL/side)をmPFCに局所投与したところ、ストレス負荷による場所嗜好性の増大が抑制された。【結論】以上の結果より、急性拘束ストレス負荷によるコカイン欲求行動の増強には、ポストシナプスに存在するα1受容体を介したmPFC V層錐体細胞の活性化と局所神経回路の興奮性の上昇が関与していることが示唆された。