ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-5形質細胞様樹状細胞の遊走を抑制する和漢薬含有化合物の探索とその炎症性腸疾患病態モデルに対する治療効果○張?、山本武、門脇真(富山大和漢研・消化管生理学)【背景】樹状細胞(dendritic cell; DC)は強力な抗原提示能とサイトカイン分泌能を持ち、適切なタイミングで適切な感染部位やリンパ節へ遊走することにより自然免疫応答と獲得免疫応答を制御し、免疫応答の司令塔として恒常性維持や生体防御に重要な役割を果たしている。従って、DCが「適切な場所」に遊走することによって初めて、免疫制御機能を発揮することが可能となる。DCは通常型樹状細胞(cDC)と形質細胞様樹状細胞(pDC)の2種類に大別されている。近年、炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎とクローン病の患者において、腸管粘膜層に分布するpDCが過剰に増加していることが報告された。しかし、腸管粘膜免疫系での免疫応答におけるpDCの役割は未だ解明されていない。そこで、本研究ではpDCの遊走に着目し、pDCの遊走を制御する薬剤を漢方薬の構成生薬に含有される化合物から探索し、その化合物の炎症性腸疾患病態モデルに対する治療効果を検討した。【方法】6-10週齢の雄性BALB/cマウスの大腿骨及び脛骨より骨髄細胞を採取し、pDC及びcDCに分化誘導した。そして、細胞動態測定装置(EZ-TAXIScan)を用いて、ケモカイン(CCL21及びCXCL12)による遊走能(遊走細胞数、遊走速度、ケモカイン濃度に対する遊走の方向性)に対する各化合物の作用を検討した。さらに、9週齢の雄性BALB/cマウスに3%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を7日間投与して炎症性腸疾患病態モデル(DSS大腸炎モデル)を作製し、探索した化合物の治療効果を検討した。【結果】漢方薬の構成生薬の成分に由来する80種類の化合物を用いてpDCの遊走に対する効果を検討した。Astragaloside-IV(As-IV)、Berberine(Ber)、Curcumin(Cur)、Isofraxidin(Iso)及びOxymatrine(Oxy)は、遊走したpDCの細胞数をそれぞれ、7、10、17、7、32%に有意に減少させた。次に、これらの化合物を用いてcDCの遊走に対する効果を検討した。Ber、Cur、Isoは遊走したcDCの細胞数を減少させたが、As-IVとOxyはcDCの遊走には影響を与えなかった。そこで、DSS大腸炎モデルに対するpDC特異的遊走阻害薬であるAs-IV(50 mg/kg/day i.p.)とOxy(100 mg/kg/day i.p.)の効果を検討した。As-IV投与群では、未治療群と比較して体重の減少が有意に抑制され、腸管の短縮、下痢や血便の症状も有意に抑制された。また、Oxy投与群でも、未治療群と比較して体重の減少が抑制され、下痢と血便の症状が抑制された。【結論】生薬由来化合物を用いた探索研究により、As-IVとOxyはcDCの遊走には影響を与えずにpDCの遊走のみを抑制するという特異性を有すること明らかにした。さらに、As-IVとOxyがDSS大腸炎モデルに対して治療効果を示すことを明らかにした。従って、pDCは炎症性腸疾患の病態形成に関与し、pDCの遊走の抑制は炎症性腸疾患の治療に繋がることを示唆した。