ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-6miR-361-5pによる抗酸化遺伝子の発現制御○千秋政徳、中野正隆、深見達基、中島美紀(金大院薬)[背景・目的]生体に投与された薬物は極性の高い代謝物に変換されることで体外に排出されやすくなるため、薬物代謝反応は一般的に解毒反応と捉えられるが、代謝過程で反応性中間体が生じ、毒性を引き起こす場合がある。反応性中間体は、酸化ストレスや細胞死の原因となる活性酸素種(ROS)の産生を促進する。しかし生体にはグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)やスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)など、ROSを除去する抗酸化酵素が存在しており、生体防御システムが備わっている。microRNA (miRNA)は22塩基程度からなるノンコーディングRNAでありヒト全mRNAの60 %以上の発現制御に関与する。本研究では、miRNAが抗酸化遺伝子の発現を制御し、酸化ストレスによる毒性の感受性を大きく左右する可能性を考え、ヒトGSTA1、GSTA2およびSOD1がmiRNAによって発現制御されるか明らかにすることを目的とした。[方法]複数の予測プログラム(miRWalk, microRNA.org, TargetScan)を用いて、GSTA1、GSTA2およびSOD1 mRNAに結合するmiRNAを探索した。miR-361-5p mimicをヒト肝がん由来HepG2細胞に導入し、GSTA1、GSTA2およびSOD1 mRNAまたはタンパク質発現量をリアルタイムRT-PCRおよびウェスタンブロット解析によって測定した。1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼンを基質としてGST酵素活性を、SOD assay kitを用いてSOD酵素活性を測定した。GSTA1 mRNAの3'-非翻訳領域(3'-UTR)に存在する認識配列(MRE)が機能的かどうか調べるため、GSTA1 3'-UTRを含むプラスミド(pGL3p/GSTA1)を用いたルシフェラーゼアッセイを行った。[結果・考察]コンピューター解析により、GSTA1、GSTA2およびSOD1の3'-UTRに共通して結合するmiRNAとしてmiR-361-5pが予測された。HepG2細胞にmiR-361-5pを過剰発現させることにより、GSTA2 mRNA発現量に変動は認められなかったがGSTA1 mRNAおよびGSTAタンパク質発現量の有意な低下が認められた(P < 0.001)。またmiR-361-5p mimic導入によりGST活性の減少傾向が認められた。pGL3p/GSTA1プラスミドを導入した際のルシフェラーゼ活性が、miR-361-5pmimic導入により38 %減少したことから、GSTA1のMREが機能的であることが示された。SOD1についても、HepG2細胞にmiR-361-5pを過剰発現させることによりmRNAおよびタンパク質発現量の有意な低下が認められ(P < 0.05)、SOD活性の減少傾向が認められた。以上より、miR-361-5pはGSTA1やSOD1の発現を負に制御することが示された。[結論]本研究では、抗酸化遺伝子GSTA1およびSOD1の発現がmiR-361-5pによって負に制御されることを明らかにし、miR-361-5pが酸化ストレスによる毒性感受性を左右する鍵となることが示唆された。