ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-7細胞容積調節機構に関与するアニオンチャネルの機能制御分子〇松田夏穂1、清水貴浩2、藤井拓人2、富井寿詠2、酒井秀紀2(1富山大・薬、2富山大院・薬)【背景・目的】容積感受性外向き整流性(VSOR) Cl -チャネルは、ほぼすべての動物細胞に発現し、細胞の容積調節に必須の分子として知られている。VSOR Cl -チャネルは細胞死にも関与しており、このチャネルの持続的な活性化により容積が減少し、細胞は死に至る。近年、VSOR Cl -チャネルの構成因子および機能制御分子として、いくつかの分子が報告されているが、分子実体の全容解明には至っていない。これまでに当研究室で行われたプロテオミクス解析により、VSOR Cl -チャネル機能に関連するタンパク質としてswelling-sensitive molecule (SSM)を見出している。SSMには3つのアイソフォーム(SSM-A~C)が存在することから、本研究では、ヒト口腔癌細胞およびマウス胎児線維芽細胞を用いて、各SSMの発現がVSORチャネル活性に影響を与えるか否かを検討した。【方法】緑色蛍光色素を付加したsiRNAを用いたリポフェクション法により、ヒト口腔癌KB細胞のSSM-A~Cを、それぞれノックダウンした。トランスフェクションの48時間後に、緑色蛍光の見える細胞にパッチクランプホールセル記録法を適用した。SSM-AあるいはSSM-Bをノックアウトしたマウス胎児繊維芽MEF細胞も使用した。各細胞における遺伝子発現は、定量的リアルタイムPCR法により確認した。細胞容積測定は、コールターカウンター法により行った。各細胞を等張溶液、低張溶液で懸濁し、時間経過に伴う細胞容積変化を観察した。【結果・考察】まず、各SSMをノックダウンしたKB細胞におけるVSOR Cl -チャネル電流を観察した。コントロールKB細胞において、細胞外を低張溶液にすると細胞膨張と共に脱分極側で時間依存的不活性化を示すVSOR Cl -チャネル電流の増加が観察された。SSM-Aノックダウン細胞ではこの電流が有意に抑制されたが、SSM-BおよびSSM-Cノックダウン細胞では、コントロール細胞と同程度のVSOR Cl -チャネル電流が見られた。このチャネル活性と細胞容積回復能の相関を確かめるため、コールターカウンター法による細胞容積測定を行った。コントロールKB細胞では、低張溶液で細胞を懸濁後、2分程で細胞容積がピークに達し、その後約10分で元の状態まで回復した。SSM-Aノックダウン細胞では、ピーク時の容積はコントロールと同程度であった一方、容積回復能はコントロール細胞と比較して有意に小さかった。SSM-BおよびSSM-Cノックダウン細胞では、コントロール細胞と同程度の容積回復能を示した。次に、SSM-AおよびSSM-Bノックアウトマウス由来のMEF細胞を用いて、VSOR Cl -チャネル電流を観察した。SSM-Aノックアウト細胞においても、VSOR Cl -チャネル電流は野生型(WT)細胞の電流と比較して有意に小さかったが、SSM-Bノックアウト細胞ではWT細胞と同程度の電流が見られた。細胞容積測定において、SSM-Aノックアウト細胞の容積回復能はコントロール細胞と比較して有意に小さかった。一方、SSM-Bノックアウト細胞は、WT細胞と同程度の容積回復能を示した。これら発現抑制系において、VSOR Cl -チャネル活性はSSM-Aの発現と正に相関することが分かった。その一方で、同じアイソフォームに属するSSM-BやSSM-Cの発現の低下はVSOR Cl -チャネル活性に影響を与えなかった。本研究により、SSM-AがVSOR Cl -チャネルの新たな機能制御分子であることが示唆された。