ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

ページ
77/140

このページは 第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部 の電子ブックに掲載されている77ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-8内臓脂肪組織マクロファージの除去が肥満を抑制する機序の検討○松澤崇俊、和田努、小野木康弘、桶川晃、渡邊愛理、恒枝宏史、笹岡利安富山大学病態制御薬理学【目的】食餌性肥満マウスで認められる内臓脂肪組織の肥大化には、新たな領域を栄養するために血管新生が重要である。我々は、肥満に伴い内臓脂肪で増加するPDGF-Bが脂肪組織血管新生を促進し、脂肪組織の肥大化を引き起こすことを報告し、さらに肥満に伴い脂肪組織に浸潤する炎症性マクロファージはPDGFを高発現することを見出した。しかし、脂肪組織マクロファージと血管新生の直接的な関係性は明らかではない。そこで本研究では、クロドロン酸リポソーム投与により脂肪組織のマクロファージ除去マウスを作製し、本マウスの代謝表現型と脂肪組織血管への影響を検討した。【方法】8~9週齢の雄性C57BL/6Jマウスに対し60%高脂肪食(HFD)を給餌し、同時にPBSまたはマクロファージの除去試薬であるクロドロン酸を内包したリポソーム(PBS-lipo, CL-lipo)を週に2回腹腔内投与した。HFD負荷4週以降にマウスの糖代謝を糖およびインスリン負荷試験にて、体組成分布はMRIにて、エネルギー代謝は小動物代謝計測システムを用いて検討した。HFD負荷6週後に解剖し、内臓脂肪組織の炎症および血管新生関連遺伝子の発現をreal-time PCR法にて定量した。【結果】HFD負荷による体重増加、内臓脂肪および皮下脂肪体積、解剖時の脂肪組織重量は、CL-lipo投与群で有意に抑制されたが、除脂肪体積には影響を認めなかった。また、CL-lipo投与群では、組織学的検討により脂肪細胞面積が低下し、HFD負荷による耐糖能の悪化が抑制された。さらに、HFD負荷CL-lipo投与群では、摂食量には変化を認めないがエネルギー消費量は亢進し、肝臓や褐色脂肪組織に対する異所性脂肪蓄積が抑制された。その際、HFD負荷CL-lipo投与群の内臓脂肪組織では、Pdgf-bのmRNA発現の有意な低下を認めた。【結論】HFD負荷CL-lipo投与群では、脂肪組織のマクロファージ除去により内臓脂肪の肥大化と肥満に伴う慢性炎症の進展が抑制されることで、マウスは糖代謝の改善を示した。肥満の進展に重要なPdgf-b発現は、内臓脂肪組織マクロファージの除去により低下したことから、PDGF-Bの主な産生細胞として、肥満に伴い脂肪組織に浸潤するマクロファージの重要性が示唆された。