ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

ページ
79/140

このページは 第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部 の電子ブックに掲載されている79ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-10Acute restraint stress負荷マウスにおける低用量MPTPに対する線条体ドパミン神経の脆弱性○佐藤舞由子(北陸大・薬),森厚詞(名古屋大・院医),光本泰秀(北陸大・薬)【背景・目的】孤発性パーキンソン病の発症要因については未だ明らかにされていない。しかしながら,ストレス性精神障害であるうつ病が本疾患発症の危険因子になり得る可能性が疫学研究により示唆されている。我々は,精神的ストレスやストレス性精神障害がパーキンソン病発症の引き金になり得ることやその病勢の進行を助長するとの仮説のもと,MPTP処置パーキンソン病マウスモデルを用いて,精神的ストレスが線条体ドパミン神経変性に及ぼす影響やその作用機序の解明を進めている。本研究では,Acute restraint stress (ARS)の負荷条件やMPTP神経毒の投与条件の違いが線条体ドパミン神経変性に与える影響を検討した。【方法】ARS負荷は,8週齢の雄性C57BL/6Nマウスに専用の拘束チューブ(Φ3 x 12 cm)を用い,1日5時間の拘束を1日もしくは3日間行った。各々拘束終了1時間もしくは72時間後に20 mg/kgMPTPを腹腔内投与し,その3日後に線条体を摘出した。ドパミン神経変性は,組織ホモジネイトを用いウェスタンブロット法により,ドパミントランスポーター(DAT),チロシン水酸化酵素(TH)およびグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)のタンパク質レベルを指標に評価した。線条体ドパミン(DA)量の測定は,電気化学検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC-ECD)にて行った。【結果・考察】ドパミン神経毒MPTPの腹腔内投与により,マウス線条体のDA量,DATタンパク質及びTHタンパク質レベルは用量依存的に低下した。MPTP処置マウスに対するARSの影響を検討する際には,ドパミン神経に対する毒性が比較的軽度な低用量(20 mg/kg)のMPTPを用いた。昨年の本支部例会において,1日5時間のARSを3日間負荷し,最終拘束終了24時間後にMPTPを投与したマウスでは,無拘束マウスに比べ,MPTP投与による線条体DATタンパク質レベルの低下及びGFAPレベルの増加が抑制されたことを報告した。今回,同様のARS負荷条件下,最終拘束72時間後にMPTPを投与し検討を行った結果,MPTP投与による線条体DATタンパク質レベルの低下及びGFAPレベルの増加が抑制された。次に5時間1回のARSを負荷し,拘束終了1時間後にMPTPを投与し検討したところ,無拘束群に比べストレス負荷群においてDAT及びTHのタンパク質レベルの低下及びGFAPレベルの増加が認められた。以上の結果より,マウス線条体ドパミン神経は,ARS負荷によってドパミン神経毒MPTPに対する感受性が増大すること,更にARSの負荷条件やMPTP投与条件によってはARSが神経保護的に作用することが示唆された。このことは,ARS負荷が早期にドパミン神経のMPTPに対する脆弱性を惹起し,その過程が何らかの防御機構を誘導していると考えられた。