ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-11St. John’s wortによる薬物の消化管動態影響因子の発現変動評価法○三木佑里佳,小森久和,岩井瑠佑,中西猛夫,玉井郁巳(金沢大院薬)【背景・目的】健康食品の中でもSt. John’s wort (SJW)は臨床での薬物-食物相互作用(Drug-Food Interaction, DFI)が多く報告されている.その機序として,SJWが薬物の体内動態に影響を及ぼすP-glycoprotein(P-gp)やcytochrome P450 3A4 (CYP3A4)の発現を誘導することがあげられる.そこで,DFIの予測方法としてP-gpやCYP3A4の発現や機能への影響が評価されているが,最終的には各SJW製品の薬物動態への影響の程度を評価・予測することが求められる.しかし,各々のグループが独自の方法でSJWを抽出して発現や機能を評価しているため,DFIのリスクを判断することは困難である.そこで,我々は臨床情報のあるSJW製品Jarsin Rを基準として他の製品との比較を行い,in vitroでのP-gp及びCYP3A4の誘導から,臨床でのDFIの程度を予測ができないかと考えた.なお,既報での抽出方法が様々であることからSJW抽出法を統一するとともに,より生理的条件に近い抽出方法で抽出し,mRNAの誘導を評価した.【方法】既報の溶媒(methanol, water等)あるいは人工腸液(FeSSIF (Fed-state simulated intestinal fluid)等)にSJW製品300 mg(製品重量250-762.4mg/粒を参考)を転倒撹拌し,上清を得た.本抽出液をヒト結腸がん由来LS180細胞に24時間曝露後,P-gp及びCYP3A4のmRNA発現を定量的RT-PCRにより測定した.抽出液中のhyperforin (HyF)及びhypericin (HyC)はHPLCにより定量した.【結果・考察】既報に従ってSJWを抽出した場合,P-gp及びCYP3A4の誘導は有機溶媒による抽出物でより高く誘導された.国内市販のSJW製剤によるDFIリスクを比較するため,P-gp及びCYP3A4の誘導活性成分としてHyF及びHyCをmethanol抽出物中で定量すると,製剤間で抽出溶液中濃度が異なり,P-gp及びCYP3A4誘導はHyF濃度と正の相関を示した.実測された抽出物中の濃度範囲では,HyF標品はP-gp及びCYP3A4を濃度依存的に誘導し,HyC標品では誘導されなかった.一方,FeSSIFを用いた場合,抽出液中のHyF濃度及びmRNA誘導レベルはmethanol抽出時と比べていずれも低く,Jarsin Rを含む製品間での誘導の差はmethanol抽出時と比べて小さかった.これは,HyF抽出量がmethanolと比較してFeSSIFで低いために,SJW製剤間のHyF含有量の相対的な差が抽出物間のHyF量の違いに小さく反映されたためと考えられる.【結論】既報の有機溶媒抽出によるSJW製剤のP-gp及びCYP3A4の誘導性評価は,FeSSIFによる抽出に比べて生体を反映していないだけでなく,製剤間の誘導差を過大評価してしまう可能性が示された.Methanol抽出と比較して,FeSSIFによる抽出ではSJW製剤間でのP-gp及びCYP3A4の誘導の差が小さく,Jarsin Rは臨床試験においてcyclosporineのAUCを50%程度低下させる報告もあることから,本試験で用いたSJW製剤ではいずれもJarsin Rと同程度のin vivoでの動態変動が考えられた.