ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-12ヌクレオチド除去修復解析に用いるDNA損傷プローブ作製の試み〇崎川知穂、三代憲司、上田将信、若杉光生、国嶋崇隆、松永司(金沢大院薬)[背景・目的]紫外線や化学物質などで生じるDNA損傷は、突然変異、がん化、細胞死や老化を引き起こす要因となる。このようなDNA損傷を修復する機構として、ヒトにはヌクレオチド除去修復(nucleotideexcision repair;NER)が備わっている。NERのコア反応は試験管内で再構成され、必須因子が同定されて各々の役割が明らかになっているが、細胞内での高次な環境におけるNER反応は調節機構を含めて非常に複雑であり、全容解明にはほど遠い。本研究では、細胞内のNER反応のモニターや新規のNER因子の同定に利用可能なDNA損傷プローブの作製を試みたので報告する。[方法]損傷形成部位としてUVA照射で活性化してDNAに結合するangelicin骨格と、検出部位として銅なしでもクリック反応が進むシクロオクチン骨格をリンカーでつないだプローブをデザインし、クロロ化したangelicin誘導体をシクロオクチン誘導体のアミノ基と結合させて作製した。この際に、リンカーの長さや構造の異なる3種類のプローブを合成した。作製したプローブのUVA依存的DNA結合活性は、処理したプラスミドDNAを制限酵素で切断し、その耐性化により評価した。細胞内におけるDNA損傷形成能は、DNA損傷に応じて生じるヒストンH2AXやp53のリン酸化反応を指標にした。[結果・考察]直鎖化したプラスミドDNAとプローブを混合してUVAを照射し、angelicinやpsoralenがTA部位に入りやすいことから、TA部位を認識サイトにもつ制限酵素SspIで切断したところ、プローブの濃度やUVA線量に依存して切断が抑制され、3種のプローブではリンカーの長いものが高い抑制を示した。このことから、作製したプローブはDNAの塩基対間にインターカレートし、UVA依存的にDNAに結合していると考えられた。次に、細胞から抽出したゲノムDNAとプローブを混合し、UVA照射後、ELISA検出用プレートにコートしてazide-biotinとクリック反応させ、HRP-streptavidinを用いて検出したところ、azide-biotinの付加が確認できた。そこで、生きた細胞に対するプローブのDNA損傷形成能を調べた。肺がん由来A549細胞にプローブを処理し、UVAを照射して各時間置いた後、DNA損傷生成の指標となるH2AXやp53のリン酸化を特異抗体で検出した。その結果、プローブとUVAの両方を処理した場合のみH2AXとp53のリン酸化が検出されたことから、細胞内でもUVA存在下でDNA損傷を形成しうることが示唆された。現在、コロニーアッセイで細胞障害性を解析中であり、また実際にクリック反応を利用して蛍光による検出が可能か検討しており、合わせて報告する予定である。