ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-13胃プロトンポンプ活性に対するSonic hedgehogの効果○シリポーンプッタティラーパープ、藤井拓人、清水貴浩、酒井秀紀(富山大院・薬)【背景・目的】Sonic hedgehog(Shh)は、胚発生において細胞の増殖や分化、および四肢の発生等に働く重要なモルフォゲンである。胃においては、胃酸分泌細胞に高発現している。胃酸分泌(低pH)によりペプシノゲンから生成したペプシンによりShhのN末端が切断されると、そのN末端ポリペプチド(Shh-N)は、活性化型シグナル伝達ペプチドとして胃管腔へ分泌され、胃粘膜傷害時における粘膜修復に関与している。また近年、Shh-Nは、胃酸分泌細胞において酸(HCl)分泌のプロトン(H +)輸送を担う胃プロトンポンプ(H + ,K + -ATPase)に結合する可能性が示唆されている。しかし、Shh-Nの胃酸分泌細胞における詳細な発現分布およびH + ,K + -ATPaseに及ぼす効果については不明である。本研究では、Sonic hedgehogの細管小胞における発現およびH + ,K + -ATPaseの酵素活性に対する効果について検討を行った。【方法】本研究では、ヒトSonic hedgehog N末端リコンビナントを用いて機能解析を行った。標本として、Ficoll/sucrose密度勾配遠心によりブタ胃粘膜から単離した胃細管小胞サンプル(tubulovesicle: TV)、およびウサギH + ,K + -ATPaseのαおよびβサブユニットを安定発現させたブタ腎臓由来LLC-PK1細胞より調製した膜画分を用いた。ShhのN末端配列を認識する抗Shh抗体を用いてウェスタンブロット解析を行った。ATPase活性は、ATPが加水分解された際に生じる無機リン酸を比色定量することで評価し、H + ,K + -ATPase特異的阻害薬のSCH28080に感受性のK +依存性活性を測定した。【結果・考察】Shh-Nリコンビナントにより特異性を確認した抗Shh抗体を用いてウェスタンブロット解析を行った。TVおよび胃粘膜画分においてShh-Nの目的サイズである約19 kDaの位置にバンドが検出されたが、約45 kDaの位置に観察される全長Shhの発現レベルは、Shh-Nに比べて低かった。次に、凍結乾燥処理し膜の透過性を高めたTVサンプルを用いて、H + ,K + -ATPase活性に対するShh-Nリコンビナントの効果を検討した。Shh-Nは、濃度依存的(0.5, 1.0, 1.5, 2.0μg/ml)にH + ,K + -ATPase活性を減少させた。また、H + ,K + -ATPase安定発現LLC-PK1細胞から調製した膜画分においても、Shh-Nリコンビナント(2.0μg/ml)は、H + ,K + -ATPase活性を有意に抑制した。以上の結果より、酸分泌時に胃管腔に分泌されるShhの活性化型N末端ペプチドは、胃プロトンポンプの酵素活性を負に制御しているものと考えられる。本研究により、Shhは胃において、これまでに報告されているモルフォゲンとしての機能や粘膜修復機能に加え、新たな機能を有することが明らかになった。