ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

AG-15Oxaliplatin誘発冷的アロディニアに対する新規PAC1受容体アンタゴニストの効果1 1 1 2 3 3 2 1○上田隆拡,長島涼太,渡辺藍,岡田卓哉,栗原崇,宮田篤郎,豊岡尚樹,髙﨑一朗1富山大学院理工学教育部生体情報薬理学研究室2富山大学院理工学教育部生体機能性分子工学研究室3鹿児島大学院医歯学総合研究科生体情報薬理学分野【目的】Oxaliplatin (OXA)は,転移性大腸がんの第1選択薬として用いられている抗がん剤である。OXAによって誘発される重篤な副作用の1つに末梢神経障害が報告されている。臨床において,どれだけ抗腫瘍効果がみられてもこの末梢神経障害によりOXAの投薬を中止せざるをえないことが問題となっている。また問題になっているにもかかわらず有効な鎮痛薬がないのが現状である。当研究室ではこれまでにPACAP (pituitary adenylare cyclase-activating polypeptide)の受容体サブタイプの一つであるPAC1受容体が痛みの慢性化に重要な役割を果たすことを見出し,さらにイン・シリコスクリーニングにより初の有機小分子PAC1受容体アンタゴニストのPA-8を見出した。本研究では, OXA誘発末梢神経障害疼痛モデルマウスを用いて, OXA誘発冷的アロディニアに対し, PA-8および新規に合成したPA-8の誘導体(PA-8X, PA-8Y)の効果を検討した。【方法】実験にはddYマウス(雄性, 6週齢)を使用した。OXA誘発末梢神経障害疼痛モデルはOXA (2 mg/kg)を腹腔内に単回投与することにより作製した。冷刺激に対する反応は,後肢足蹠へのacetone (10μL)適用後, 1分間における疼痛関連様動を評価した。【結果】マウスにOXA (2 mg/kg)を単回投与すると,投与1日後からアセトンによる冷刺激に対する反応時間の増大,すなわち冷的アロディニアがみられ,少なくとも5日間持続した。最も強く冷的アロディニアが見られた4日後のマウスを用いて実験を行った。まず, OXA誘発冷的アロディニアに対する脊髄PACAP-PACAP受容体の関与を調べる目的で, PACAP受容体のペプチド性アンタゴニストであるPACAP 6-38 (100 pmol)をマウスに脊髄くも膜下腔内投与すると,冷的アロディニアを抑制した。したがって, OXA誘発冷的アロディニアにはPACAP-PACAP受容体が深く関与していることが示唆される。そこで当研究室で見出したPAC1受容体アンタゴニストPA-8の効果を検討したところ, PA-8 (100 pmol~10 nmol)の脊髄くも膜下腔内投与は,用量依存的に冷的アロディニアを抑制した。次にPA-8および誘導体化合物の全身性投与の効果を検討した。PA-8 (3~30mg/kg)およびPA-8X, PA-8Y (10 mg/kg)の腹腔内投与により冷的アロディニアを抑制した。医薬品としての有用性を示すためには,経口投与での有効性を証明する必要があると考えられる。そこでPA-8, PA-8X, PA-8Y (10, 30 mg/kg)を経口投与すると腹腔内投与と同様に有意な抑制効果がみられた。臨床において, OXAは投与タイミングを断定することができる。そこでPA-8が冷的アロディニアの発症を予防できるかどうか検討した。OXA投与前にPA-8 (3~30 mg/kg)を腹腔内投与したところ, 10および30 mg/kg投与群において有意な抑制効果がみられた。次にPA-8 (3~30 mg/kg)をOXA投与の30分前, 2.5, 5.5時間後に3回投与したところ,用量依存的に抑制し,単回投与では抑制しなかったPA-8 (3 mg/kg)においても抑制効果がみられた。【考察】PACAP 6-38, PA-8の脊髄くも膜下腔内投与によりOXA誘発冷的アロディニアを抑制したことからPACAP-PAC1受容体の関与が強く示唆された。PA-8, PA-8X, PA-8Y腹腔内投与は冷的アロディニアを強く抑制し,また経口投与でも腹腔内投与と同様の抑制効果がみられた。したがってPA-8および誘導体化合物はOXA誘発冷的アロディニアに対し,経口投与が可能な鎮痛薬となる可能性を見出した。今後はPA-8X, PA-8Yのより詳細な評価を行い,有用な鎮痛薬の開発を行いたい。