ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

BS-1α線内用療法を目指した標識ペプチドの合成と基礎的評価○武田拓也(金沢大院医薬保)、小川数馬(金沢大新学術)、三代憲司(金沢大新学術)、豊嶋厚史(大阪大院理)、吉村崇(大阪大RI総合セ)、篠原厚(大阪大院理)、柴和弘(金沢大学際セ)、絹谷清剛(金沢大院医薬保)、小谷明(金沢大院医薬保)【背景・目的】α線は高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer ; LET)を持ち、標的部位に効率よく集積させることができれば高い治療効果が期待できる。α線放出核種のなかでもハロゲンである211 Atは適度な半減期(T 1/2 = 7.2 hr)を有し、Iなどと類似した化学的性質を持つため近年注目されている。しかし、タンパク質やペプチドのチロシン残基への放射性ヨウ素標識に頻用されるクロラミンT法による211 At標識を試みても放射性ヨウ素標識と同様には反応が進行しない。本研究では、ペプチドの新規211At標識法の確立を目的として、新生血管に過剰発限していることが知られているαVβ3インテグリンに高親和性を示す環状RGDペプチドをモデルペプチドとして用い、211 At標識ペプチドの合成、及び、評価を行った。【実験】Fig. 1. Chemical structureof 211 At-c(RGDfK)Fmoc固相合成時にFmoc-D-phenylalanineの代わりにFmoc-D-4-iodophenylalanineを用いc[R(Pbf)GD(OtBu)f(4-I)K(Boc)]を合成し、ヨウ素をトリブチルスズ化することにより標識前駆体を作製した。標識前駆体を211 At標識後、保護基を脱保護することにより211 At-c(RGDfK) (Fig. 1)を放射化学的収率33%で作製した。αVβ3インテグリンが過剰発現しているU87MGヒトグリオーマ細胞担癌モデルマウスを用い、125 I-c(RGDfK)と211 At-c(RGDfK)を同一マウスに投与するダブルトレース法による体内放射能分布実験、並びに、c(RGDfK)同時投与によるブロッキング実験を行った。【結果・考察】211At-c(RGDfK)を放射化学的純度96%以上で合成した。U87MG担癌モデルマウスにおける体内放射能分布実験を行った結果、投与後1時間で125 I-c(RGDfK)および211 At-c(RGDfK)は、腫瘍組織に高く集積( 125 I-c(RGDfK);4.6%ID/g、211 At-c(RGDfK);5.3%ID/g)し、両標識化合物は類似した体内分布を示した。また、ヨウ素アニオン、アスタチンアニオンの集積臓器として知られている胃への放射能集積が高値を示さなかった( 125 I-c(RGDfK);1.1%ID、211 At-c(RGDfK);1.1%ID)ことから、生体内で顕著な脱ヨウ素化、脱アスタチン化は起きていないことが示唆された。次いで、ブロッキング実験の結果、投与後1時間で125 I-c(RGDfK)および211 At-c(RGDfK)の腫瘍集積は著しく低減( 125 I-c(RGDfK);0.8%ID/g、211 At-c(RGDfK);1.1%ID/g)し、その集積はαVβ3インテグリン特異的であることが示唆された。以上のことより、211 At-c(RGDfK)のRI内用療法用薬剤としての可能性が示唆された。本研究の標識法の応用性は高く、本標識法により他の様々な腫瘍指向性ペプチドも211 At標識が可能と成り得るため、今後、他の腫瘍指向性ペプチドを用いた研究も行っていく予定である。