ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

BS-2蛍光ラベルペプチドを用いたアミロイド線維形成とペプチド間相互作用の評価○内田裕樹、池田恵介、中野実(富山大・院薬)【背景】線維状のタンパク質凝集体であるアミロイド線維は、II型糖尿病やアルツハイマー病など多数の疾患に関係しており、その形成過程の理解は疾患メカニズムを解明する上で重要である。近年、生体内で異なる2つのアミロイドタンパク質が線維形成の際に相互作用することが示唆されている。しかし、2種類の異なるアミロイドタンパク質が混在している条件下で、アミロイド線維形成およびペプチド間の相互作用を計測・評価するための方法が限られているため、その詳細は未だ不明である。そこで本研究では、2種類線維形成モデルペプチドが混在している条件下で、それぞれのアミロイド線維形成およびペプチド間の相互作用について、蛍光ラベルペプチドを用いた測定系により評価を行った。【方法】IAPP(20?29)Dansyl-IAPPAβ(14?23)Dansyl- AβDansyl-SNNFGAILSS-CONH 2Dansyl-SNNFGAILSS-CONH 2il iiiAc-HQKLVFFAED-CONH 2Dansyl-HQKLVFFAED-CONH 2アミロイド線維形成のモデルペプチドとして、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)およびアミロイドβタンパク質(Aβ)のフラグメントペプチドIAPP(20?29)、Aβ(14?23)を用いた。また、これらTable 1ペプチドアミノ酸配列のペプチドのN末端を蛍光色素Dansylでラベルしたペプチドを合成した(Table 1)。これらのペプチドは、Fmoc固相合成法によって合成した。Buffer (50mM MOPS-NaOH / 2.5 mM EDTA-2Na, pH 7.0)中、37℃で凝集実験を行った。線維形成モニタリングにはチオフラビンT(ThT)の蛍光強度変化を用いた。線維に対するDansylラベルペプチドの結合はDansyl基の蛍光スペクトル変化によって評価した。形成したアミロイド線維は透過型電子顕微鏡下で観察を行った。【結果・考察】IAPP(20?29) (150μM)またはAβ(14?23) (150μM)が単独で存在する条件での線維形成を、ThT蛍光を用いてモニタリングしたところ、IAPP(20?29)とAβ(14?23)はそれぞれBuffer中で線維形成することが分かった。次に、Dansyl-IAPP (15μM)をあらかじめ作成したIAPP(20?29)線維(100μM)またはAβ(14?23)線維(100μM)に添加すると、IAPP(20?29)線維に加えた時のみDansylの蛍光強度が著しく増大した。また、Dansyl-IAPP 15μM存在下でIAPP(20?29) (150μM)の線維形成を観察すると、Dansyl蛍光強度はThT強度の増大と一致したキネティクスで増大した。以上から、Dansyl-IAPPを用いることで、非蛍光ラベル体であるIAPP(20?29)の凝集を特異的に評価できることが示された。一方、Dansyl-Aβ(15μM)を各線維(100μM)に添加すると、IAPP(20?29)線維またはAβ(14?23)線維存在下でDansylの蛍光強度が増大したことから、Aβ(14?23)が両方の線維に結合することが示唆された。興味深いことに、Dansyl-Aβは、Aβ(14?23)の線維形成に伴って蛍光強度が増大する一方、IAPP(20?29)の線維形成を抑制することが明らかとなった。同様に、非蛍光ラベル体であるAβ(14?23)存在下でもIAPP(20?29)の線維形成は阻害された。以上より、異なるアミロイドペプチドの混合系におけるペプチド間相互作用の可能性が示された。