ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

BS-5古細菌由来基本転写因子TFEのX線結晶構造解析〇三輪康平、帯田孝之、大熊芳明、水口峰之(富山大院薬)【背景・目的】遺伝子の転写は、RNAポリメラーゼによって触媒され、複数の基本転写因子がその制御を行っている。RNAポリメラーゼと基本転写因子からなる転写開始前複合体は、二本鎖DNAがほどかれた開放型複合体となって転写を開始する。基本転写因子TFIIEは、この開放型複合体の形成を促進する。最近の電子顕微鏡を用いた研究から開放型複合体の構造が明らかとなってきているが、それらの構造の多くは低分解能である。TFIIEの果たす機能を構造から理解するには、より高分解能の構造決定が必要である。また、TFIIEは真核生物から古細菌まで保存されている基本転写因子の一つであり、TFIIEαの古細菌オルソログであるTFEが存在する。古細菌の転写装置は、真核生物の転写装置とサブユニット組成が類似しているだけでなく、よりシンプルな構成になっていることが知られている。ヒトと古細菌のTFIIE (TFE)の立体構造を明らかにすることは、分子進化の過程で保存された機能的に重要な構造の理解につながると期待される。本研究では、X線結晶構造解析を用いて、ヒトTFIIEと古細菌TFEの構造を決定することで、TFIIE (TFE)の機能の理解につながる構造的特徴を理解することを目的とした。【方法】大腸菌を用いて、N末端に様々なタグをもつTFIIEの発現系を構築した。N末端に可溶性タグをもつαサブユニットとβサブユニットを共発現することで、安定なヒトTFIIEα/β複合体を得ることができた。一方で、古細菌TFEは、GST融合タンパク質として発現した。複数のカラム精製を行った後、GSTタグを切り離してからゲル濾過クロマトグラフィーを行った。得られたタンパク質を用いて、結晶化初期スクリーニングを行い、最適化を行って良好な結晶を得た。放射光施設Spring8にてX線回折実験を行い、高分解能でTFIIEα/β複合体と古細菌TFEの構造を決定した。【結果・考察】ヒトTFIIEα/β複合体は、αおよびβサブユニットのウイングドヘリックス(WH: Winged helix)ドメインが互いに接触し、βサブユニットの二つのヘリックスがαサブユニットに巻きつく結合様式をとっていた。古細菌TFEは、ヒトTFIIEαと同様にWHドメインとジンクフィンガードメインを持っていた。古細菌TFEとヒトTFIIEαの構造比較から、各ドメイン構造はよく保存されていたが、WHドメイン直前のhelixの位置が大きく異なっていることがわかった。本研究によって得られた高分解能の構造情報は、TFIIE (TFE)の機能の理解に役立つと考えられる。