ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

BS-6シトクロムcの膜への結合に対するカルジオリピンの効果○塚越智仁、池田恵介、中野実(富山大院医薬)Heme【背景・目的】シトクロムc (Fig. 1)は、分子内に酸化還元能をもつヘム鉄を含有する可溶性タンパク質である。シトクロムcは呼吸鎖の電子伝達系を担う重要なタンパク質であるが、近年、アポトーシス経路においても重要な役割を担うことが明らかになってきた。通常シトクロムcは、ミトコンドリア内膜に存在するカルジオリピン(CL)と弱く結合しているが、アポトーシスの初期段階において、CLの過酸化が起こり、それがシトクロムcのミトコンドリア放出につながると考えられている。しかしながFig. 1 Crystal structure of cytochrome cら、その詳細なメカニズムは明らかではない。CLは4本のアシ(PDB 1HRC)ル鎖と2個のリン酸基を有するユニークな構造をもったミトコンドリア固有のリン脂質である。この構造特異性がシトクロムcとの結合に及ぼす影響についても不明である。そこで本研究では、シトクロムcの脂質膜への結合やペルオキシダーゼ活性、そして構造変化に対する脂質選択性を評価した。【方法】電荷が-2のtetraoleoylcardiolipin (CL)、電荷がそれぞれ-1のdioleoylphosphatidic acid (PA)、dioleoylphosphatidylglycerol (PG)、そして電荷0の酸性リン脂質であるdioleoylphosphatidylcholine (PC)を用い、CL含有リポソームおよびPA/PG (=1/1)含有リポソームを作製した。ゲルろ過クロマトグラフィによりシトクロムcの脂質膜への結合を評価した。また、シトクロムcの脂質膜への結合に伴う吸収スペクトル、トリプトファン蛍光ならびにペルオキシダーゼ活性の変化を評価した。【結果・考察】ゲルろ過クロマトグラフィの結果から、シトクロムcはPCリポソームには結合せず、CLリポソームとPA/PGリポソームに結合することが判明した。また、塩濃度の増加に伴い、シトクロムcの脂質膜への結合が抑制されたことから、酸性リン脂質膜との結合には静電相互作用が寄与していることがわかった。酸性リン脂質の割合が増加するとシトクロムcの結合量は増加したが、同一の脂質組成(酸性リン脂質:PC)で比較すると、CL含有リポソームとPA/PG含有リポソームとの間で結合に差はみられなかった。酸性リン脂質リポソーム存在下において、シトクロムcのヘムに由来する吸収スペクトルが変化した。また、通常はヘムによって消光されているトリプトファン蛍光が回復した。これらの結果から、膜への結合に伴うシトクロムcのヘム近傍の構造変化が示唆された。いずれの酸性リン脂質リポソームもシトクロムcのペルオキシダーゼ活性を上昇させたが、その作用はCL含有リポソームとPA/PG含有リポソームで同等であり、ペルオキシダーゼ活性は膜結合型のシトクロムc量にほぼ比例することが明らかになった。これらの結果より、シトクロムcのペルオキシダーゼ活性の発現には酸性リン脂質との相互作用が必要であるものの、CLの構造的特徴は影響しないことが判明した。