ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

BS-9銀(Ⅰ)触媒によるジエン体の新規環化異性化反応とモノテルペノイドの合成○松本瑞希、平至仙、向智里、稲垣冬彦(金沢大院医薬保)【背景・目的】遷移金属触媒を用いた環化異性化反応は、原子効率が高く工程数の少ない直截的な手法として、近年著しく発展し注目を集めている。中でも金、銀、銅のような貨幣金属は、三重結合親和性が高く、その特性を利用した触媒反応が多く報告されている。一方、単純なアルケン成分を用いる反応の報告例は数少ないものの、二重結合を有する不飽和脂肪酸の単離には硝酸銀カラムクロマトグラフィーが用いられており、銀とアルケンとの親和性の差を利用した新たな反応性が期待される。以上の背景から、銀触媒を用いたジエン体の環化反応開発に着手した。【新規環化異性化反応の開発】種々のジエン体を用いて検討した結果、アリル-プレニル体1と5 mol%のAgSbF 6をマイクロウェーブ照射下、150℃で加熱したところ、4位にイソプロピル基を有するシクロヘキセン誘導体2が収率65%で得られることを見出した。生成物2の構造は、誘導体化した3のX線結晶構造解析により明らかにした。本反応の機構を解明するため、13 Cでラベル化した基質を用いて検討を行ったところ、基質アリル末端の炭素は環上C4位及びイソプロピル基のメチン炭素部分に相当することがわかった。また、本反応がラジカル機構であるか否かを確認するため、ラジカル捕捉剤であるBHTを本条件に添加したところ、遜色なく環化反応が進行した。以上の結果から、本反応では、カチオン性金属触媒反応による2つの異なるプロセスを経て、同一の化合物を与えることが推定された。【モノテルペノイドの合成】本反応は、C-C結合形成とメチル基転移を伴う興味深い形式であることに加え、その環化体の効率的合成法は確立されていない。そこで、本反応を利用し、抗菌活性や抗アレルギー活性等の生理活性を有する3つのモノテルペノイド(テトラヒドロクミン酸4、パラメンテノール5、パラメンテナール6)の合成を試みた。その結果、環化体2のエステル部の加水分解と脱炭酸反応を経て4へと誘導し、その後、カルボン酸部分の還元、酸化により、5、6を短工程で合成した。Inagaki, F.; Matsumoto, M.; Hira, S.; Mukai, C. Chem. Pharm. Bull. 2017, 65, 822-825.