ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

BS-12シクロデキストリンによる包接を利用した超耐光性蛍光色素の開発とその生体分子標識への応用〇由澤敦史1,藤本和久2,松本真哉3,城始勇4 1,井上将彦( 1富山大院薬, 2九産大工, 3横浜国大院環境情報, 4リガク)一般的に蛍光色素は、長時間の励起光照射により光褪色を起こし発光しなくなってしまう。光褪色は、励起状態の色素分子と、その近傍に存在する酸素分子の接触が引き金となり進行する。この劣化現象が、有機蛍光色素を発光材料やバイオイメージングに用いる際に問題となる。光褪色を克服するための戦略として、光に透明な大環状分子(Permethyl ?-cyclodextrin)で蛍光色素を包接した後、ロタキサン構造へと誘導し、酸素分子との接触を強制的に遮断する事とした(図1)。内包する蛍光色素としては、当研究室で開発したエチニルピレンを選択した。得られた[3]Rotaxane 1は、水中や凝集状態においてエキシマー発光を示すピレンの性質に反し、環境を問わずモノマー発光のみを示した。また、励起光照射に伴う1の蛍光スペクトルの経時変化を観察したところ、非包接型のエチニルピレンに比して極めて高い光安定性を有する事が分かった。CyclodextrinO2?StopperEthynylpyreneStopper Ethynylpyrene図1.エチニルピレンから成る[3]Rotaxane 1の合成スキーム[3]Rotaxane 3?abs = 388 nm続いて、このロタキサン型蛍光色素を生体分子の標識に応用する事を考えた。1は励起のために紫外光の照射を要するが(? max = 388 nm)、これは細胞毒性や透過性などの点、また汎用されているレーザー光源の点からも好ましくない。そこで新たに、可視光で励起可能なロタキサン型蛍光色素を合成する事とした。吸収波長を長波長化する目的で、共役系にフェニル基を挿入した[3]Rotaxane2を合成した。2の紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、可視光で励起可能である事が分かった(? max = 412 nm)。このロタキサン型蛍光色素にスクシンイミジルエステルを導入した後、このロタキサンを用いてウシ血清アルブミン(BSA)を共有結合により標識した(図2)。光安定性評価の際の比較対照するため、フルオレセインを用いて同様にBSAを標識した。蛍光標識したBSAの溶液に高圧水銀灯の光を照射し、蛍光スペクトルの経時変化を観測した。その結果、本ロタキサン型蛍光色素は、BSAに結合した状態でも極めて高い光安定性を有する事が示された(図3)。Protein labeling?[3]Rotaxane 2?abs = 412 nmBSA?図2.フェニルエチニルピレンから成る[3]Rotaxane 2を用いたBSAの蛍光標識図3.BSAに結合した2 (a)およびフルオレセイン(b)の励起光照射に伴う蛍光スペクトルの経時変化