ブックタイトル第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

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概要

第129回例会プログラム集 - 日本薬学会北陸支部

BS-14新規マイオカインを介したアクテオサイドによる慢性期脊髄損傷改善作用の研究〇小谷篤、東田千尋富山大学和漢医薬学総合研究所病態制御部門神経機能学分野【背景・目的】脊髄損傷では外傷により、損傷部位より下位の神経支配領域で運動機能障害が起こるが、受傷後慢性期に至ってから有効な治療法は、未だ確立されておらず、動物モデルにおいても成功例は極めて少ない。我々は脊髄損傷が難治性となる原因が、脱神経支配によって進展する骨格筋萎縮にあると考え、骨格筋を刺激し、運動機能改善を図る戦略を確立することを目的とした。【方法・結果】初代培養マウス骨格筋細胞に125種類の生薬エキスを処置した後、そのconditioned mediumを初代培養大脳皮質マウス神経細胞に処置し、軸索伸展を評価した。肉?蓉エキスにのみ骨格筋細胞に処置して得られたconditioned mediumの軸索伸展活性を認めた。肉?蓉の主要成分であるアクテオサイドにも同様の効果が認められた。また、肉?蓉エキスとアクテオサイドは骨格筋細胞の増殖促進作用も示した。次にT12-13レベルでの圧挫脊髄損傷モデルに対し、損傷30日後からアクテオサイドを後肢骨格筋に注射を開始し(3回/week)、62日間観察したところ、後肢運動機能が有意に回復した。また、後肢骨格筋の湿重量はアクテオサイド処置群で有意に増加していた。アクテオサイドを初代培養マウス骨格筋細胞に処置し、その培養上清中で増加する因子をSDS-PAGEゲルの銀染色により探索したところ、増加したバンドのnano-LC/MS解析によりPKM2が候補として示唆された。さらにWestern blotの結果により、アクテオサイド刺激によってPKM2が骨格筋から分泌されることを確認した。リコンビナントPKM2をマウス大脳皮質神経細胞に処置したところ、軸索が伸展した。マウス骨格筋細胞に対しては増殖促進作用を示した。PKM2がこのような作用を有することは新しい発見である。【結論】以上本研究では、治療困難な慢性期脊髄損傷がアクテオサイド投与により改善することと、その現象に骨格筋から分泌されるPKM2が関わっていることを初めて示した。