学術講演会
2019年12月14日(土)の午後、日本薬学会関東支部 北嶋浩支部長のもと、第44回学術講演会が日本薬学会長井記念ホールにおいて開催しました。今回のテーマは「我が国から発信される天然物化学の最前線」であり、我が国の有機合成化学を牽引される著名な研究者(4名)をお招きして行いました。
はじめに西川俊夫教授(名大院生命農学研究科)による「新たな生物活性の発見を目指した天然物の網羅的合成」であり、テトロドトキシンやステロイド系天然物等の全合成とその類縁化合物の網羅的合成、並びに生物活性評価に関する取り組みに関する研究成果が披露されました。次に徳山英利教授(東北大院薬学研究科)による「構造的に複雑なアルカロイド全合成の新展開」では、複雑な骨格を有する生物活性アルカロイドの全合成を、含窒素天然物の合成ではこれまで避けられてきた合成終盤の段階で酸化反応を積極的に活用するという斬新な合成戦略を採用することにより工程数の短縮に成功されるなど、独創性の高い研究成果が報告されました。また、井上将行教授(東大院薬)による「ラジカル反応の活用による複雑分子構築の単純化」と題する講演では、綿密に練り上げられた合成戦略を基軸とするラジカル反応を利用して高酸化度天然物の収束的短工程全合成経路の開発の経緯がわかりやすく紹介されました。最後に鈴木啓介教授(東工大理学院研究科)は、多環骨格を有するいくつかの天然物の全合成研究を展開される過程で遭遇した「難問」の解決に向けた悪戦苦闘から学んだ事柄について、豊富な経験談を交えながら紹介されました。今回の講演会は、首都圏の国公立、理系私立大学教員の皆様のご協力を賜り、約180名に及ぶ学部並びに大学院生が参加し、各先生方の魅力あるプレゼンテーションを満喫し、たいへん有意義な時間を過ごしていただけました。
今回の講演会は、これまで世界の天然物化学をリードしてきた我が国の天然物合成化学及び関連する創薬研究が継続して発展を遂げていることを再確認する場を提供するとともに、今後、薬学のみならず様々な分野で我が国の次世代を担う若手研究者や学生に夢と希望を与えることができたと確信しています。
最後になりましたが、本講演会の開催をご承認いただきました北嶋浩関東支部長、講演をご快諾いただきました4名の先生方、及び座長をお引き受けいただきました先生方3名 [橘高敦史教授(帝京大薬)、高橋秀依教授(東京理大薬)、玉村啓和教授(東京医歯大)]、並びに本講演会の企画、準備、並びに当日の運営においてご理解ご協力賜りました西島明子事務職員はじめ関係者の皆様に心から感謝の意を表します。また、本講演会の趣旨にご賛同いただき、講演要旨集に有料企業広告をお申込みいただきました企業5社(岩城製薬株式会社、日本電子株式会社、尾崎理化株式会社、ジャパンカスタム株式会社、株式会社高長)の関係者の皆様に御礼申し上げます。
第44回学術講演会実行委員長 明治薬科大学 教授 齋藤直樹
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