学術講演会
2022年11月26日(土)の午後、日本薬学会関東支部 須貝威支部長のもと、第47回学術講演会を北里大学大村記念ホールにおいて開催いたしました。今回のテーマは感染症研究の第一人者であられた北里柴三郎博士がつくられた北里研究所(現在ノーベル賞を受賞した大村智博士の大村智記念研究所)内にある大村記念ホールて、「COVID-19の予防薬、治療薬の開発〜基礎から臨床まで〜」と題し、パンデミックとなったCOVID-19に対して予防薬や治療薬の開発に貢献された日本の企業や研究者、医師(6名)をお招きして(1名はオンライン発表)、3年ぶりに対面で行いました。
はじめに山本瑞生氏(東京大学医科学研究所・特任講師)に「SARS-CoV-2の細胞内侵入経路とその阻害剤の探索」というタイトルで独自のウィルス抗原タンパク質と受容体を発現させた細胞株を用いた独自の細胞膜融合系を用いて、SARS-CoV-2に特有な侵入機構とその阻害剤を探索するというユニークな研究成果を披露されました。
次に青柳克己氏(富士レビオ株式会社・常務取締役研究開発部長)による「COVID-19抗原検査試薬の開発」では、COVID-19のNタンパク質に対する抗体をもちいた抗原検査キットの開発や全自動分析システムを用いた高感度定量抗原検査について紹介していただいた。
次に花田賢太郎氏(国立感染症研究所・品質保証・管理部・主任研究官・名誉所員)に「SARS CoV-2 mRNA/LNPワクチンの製造と品質情報について」というタイトルで、新しいmRNA/LNPワクチンの製造方法や副作用の発熱にキャリアーである脂質ナノ粒子(LNP)が関与していることなど、mRNA/LNPワクチンの開発の現状についてわかりやすく紹介いただいた。
後半部では、山下勝久氏(中外製薬株式会社・メディカルアフェアーズ本部メディカルサイエンス部メディカルマネージャー)が「COVID-19治療への抗体医薬トシリズマブを用いたアプローチ」について講演した。中外製薬株式会社が開発したトシリズマブはインターロイキン6受容体に対する抗体医薬であり、COIVD-19による酸素の投与を要する重症患者に対して、サイトカインストームの抑制効果による肺炎治療に有効であり、国内で承認を受けた治療薬である。
次に立花裕樹氏(塩野義製薬・事業開発部部長)に「COIVD-19経口治療薬Ensitrelvir(S-217622)の創製」というタイトルで、ちょうど22日に国内での軽症者向けの経口治療薬として緊急承認されたばかりの機能性ウィルスタンパク質をつくりだす3C-likeプロテアーゼに対する阻害剤である「ゾコーバ」の開発経緯について、オンライン発表で講演いただいた。
最後に鈴木雄介氏(北里大学薬学部・教授、北里研究所病院・病院長補佐)に診療の現場において、これまで承認されてきた治療薬によるCOIVD-19の薬物療法の実際について、紹介いただいた。
今回の講演会では、COVID-19への戦いにおいて、特に日本国内で予防法や治療薬の開発に第一線で従事、貢献された研究者、企業の方のご講演を拝聴することができ、大学の教員や大学院生に加え、現場の薬剤師や多くの企業の方を含む86名の方に参加いただき、活発な質疑応答もあり充実した学術講演会となりましたこと感謝いたします。
最後になりましたが、本講演会の開催をご承認いただきました須貝威関東支部長、ご講演をご快諾いただきました6名の先生方、及び座長をお引き受けいただきました奥脇暢教授、藤井秀明教授(北里大学薬学部)、並びに本講演会の企画、準備、並びに当日の運営においてご理解ご協力賜りましたに西島明子事務職員はじめ関係者の皆様に心から感謝の意を表します。また、本講演会の趣旨に賛同いただき、講演要旨集に有料企業広告をお申込みいただきました企業7社(同仁化学研究所、株式会社サエラ、塩野義製薬、富士レビオ、河内菌本舗、坂元醸造株式会社、株式会社島津製作所)の関係者の皆様に御礼申し上げます。
第47回学術講演会実行委員長 北里大学薬学部 教授 今井浩孝
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